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素手で漆を塗ってかぶれた話02
食用油は酸化により硬化しコーティングできるのに対して、漆の場合は水分を吸着し固まる(20~30℃が適温)。ちょうど瞬間接着剤と同じ原理だ。一般には湿気の少ない冷蔵庫に保管する。
木箱や段ボール箱に漆を塗ったスプーンを置き、濡れたタオルを中に入れ蓋をする。水分と気温さえよければ、1日ほどで硬化する。一晩待って仕事をして夕方に空けるのが楽しみでしょうがない。
ぱっかっと開けると、そこには薄茶色い光沢のスプーンがあるではないか。ほれぼれとしてしまう。写真の状態で2回塗りの2晩め。
いや、これはかぶれた話だ。だが、1日目、2日目とかぶれていない。これは、間違いない、漆への耐性がある側の人間だったのだ。にわかでも自然が好き、きっとネイチャーからの恩恵なのではないかと。
しかしながら事件はこの40日後に起きる。
仕事の出張で、グンマから広島へ出かけ、2泊3日のときを過ごすことになった。ホテルを取り初日はほぼ移動。2日目、訪問予定の施設を訪れ、1日を過ごす。夜は8名程度の懇親会だ。
遠出の旅だったのもあり、少し疲れてホテルに帰着。お酒もあって、少し体がほてっている。体の部分部分が赤いのだ。強烈なかゆみと共に...。後から分かったことなのだが、これは全て漆の仕業だった。
...。おかしい、かゆい。体が猛烈にかゆい。手ではなく「身体」。おなかの周り、耳、鼻、そして陰部と、およそ素手で人が癖で触る範囲はだいたい。赤みがかった体はもうとにかくかゆい。たまたま持っていたかゆみ止めを塗り、なんとか時をやりすごす。もっててよかったムヒ。
次の日、確かにかゆみは残るものの、かゆみ止めさえあれば、活動が出来ないレベルではない。少し近くを散策したのち、グンマへの帰路についた。(この時は、漆の影響だとは微塵も感じていなかった。)
グンマに戻ったのち、かゆみは、ある程度おさまっていたのだが、ある日の晩、明らかに腕の様子がおかしくなった。普段の1.5倍ほどに腫れあがったのだ。強いかゆみと共に。
この日の晩は、飲み会があり、あれやこれや呑み続けていた。結果的に言うと、この「アルコール」が悪かった。アレルギー反応が起きやすい原因のひとつがお酒。よく考えれば、広島の夜も酒を呑んでいた。
これは尋常ではないと思い皮膚科を受診。まさか40日後に腫れが出る訳がないと思っていたため、皮膚科への説明も、基本は「原因不明」。5分ほどの問診の中で、最後、「実は漆を使っていました」と話すと「それです」と診断がおりた。
医師の話によれば、漆は非常に強いアレルギーであるため、時間の経過とか、揮発とか、そういうものでもかぶれることがあるとのこと。
アレルギーを抑える薬と、かゆみを抑える薬をもらい、病院を去る。ありがとう、先生。助かったよ、先生。
しかし、40日の時間差に、どうも納得できなかった私は、この1か月後、もう一度、漆を素手で触る。
続く
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