山火事。

炎は枝の一本一本を求めて伝い、山火事は留まることを知らなかった。呼吸をする僕たちと平等に酸素は与えられていて、焼却を助けていた。僕と彼女は望遠鏡で、その様子を眺めていた。

「たくさんの動物が、焼けてしまうね」

木々が燃える音と匂いの間に、生物の叫びが含まれているような感覚があった。

「でも、もう手遅れだね」

消防車やヘリコプターは懸命に水をかけるが、鎮火の一助になっているとは思えなかった。

「まるで、ガソリンを撒いているみたいだ」

「どうして?」

「だって、どんどん燃え広がっているよ」

彼女は望遠鏡を目に付けたまま呟いた。  

「そんなこと、考えない方がいいわ」

山火事は自然に起こることがあるらしい。しかし、僕は誰かの作為によってもたらされたものだと確信している。あるいは、火をつけたのは彼女なのかもしれない。僕たちはずっと、山火事を眺め続けている。


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