ノマド。

離陸の瞬間、私はもうこの街に戻ることがないことを悟った。


流浪。私の運命を指し示す言葉。実際に私の肉体は移動を続けているし、私の精神も無常である。闊歩、駆動、そして離陸。あらゆる移動手段は私を誘い、私もまた移動手段の一部である。そうしているだけであるが、それが生きているということだと私は思う。

故郷を郷愁することはない。私にも父がいて、母がいる。祖父がいて、祖母がいる。曾祖母も曽祖父も、脈々と存在していたのだろう。しかし、私はやはり私でしかないし、私以外はまったく私以外でしかない。世の趨勢とは別軸で、私という生涯がある。一般的な(あるいはそうとされる)感覚とは別軸に、私の感覚がある。

流浪。私はたったこの瞬間も、変わり続けている。移動はその表象として、収まりがいいのかもしれない。他人と一致するところの少ない私は、その一致が心地よいのかもしれない。(現時点)

離陸の瞬間。私は可能性だけを見据え、運命を謳歌する。


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