Another Anniversary.
ガールフレンドと知らない男が僕を追い抜いていった。バージンロードを歩いているみたいで、手はしっかりと結ばれていた。僕は缶ビールを開けたついでに、後ろをついて行った。
ーとても悪かったと思う。でも、今日はもう付いてこないで。
スマートウォッチに浮かぶ文字列を見て、僕はビールを1口飲んだ。
ーごめん。今度ちゃんと説明するから。おねがい。
スマートウォッチに浮かぶ文字列を見て、僕はビールを飲み切る。開け口を上にして、缶をトートバックにしまう。
ー♪♪ さんが、あなたの投稿にいいね!しました
「ねぇ」
顔を上げると、彼女が立ち塞がっていた。
「どうしてつけるの?」
「知り合い?」
知らない男はよそよそしく彼女に尋ねる。彼女は首を振ってはぐらかし、僕を睨みつける。
「どうしてそんな酷いことをするの?」
「酷いこと?」
「あなたが、私をこうさせたの」
気が立つ彼女を見て、知らない男は薄ら笑いを浮かべている。
「今日は」
僕は彼女に会釈をする。
「……誰かの記念日だ」
彼女は溜息をつくと踵を返し、知らない男の手を取り行ってしまった。僕は遠ざかる二つの背中を見ながら、誰かの記念日を祝った。
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