美容室。

今日のお客さんは、大きくてとても理想的な頭蓋骨を持っていた。気をつけていなければ口からその言葉が漏れ出してしまうくらいに、魅力的な頭蓋骨だ。気を引き締めなければ。

「長さはどうされますか?」

「……おまかせで」

いかにも寡黙で、酒を3杯は飲まない限りは自分から話し始めないような表情をしている。この大きな頭蓋骨に格納されている、大きな脳味噌には皺がたくさん刻まれているのだろう。私はその皺に気を取られて、鋏をうっかり落としてしまいそうだった。

「それでは、切りながらでご確認しますね」

高まる鼓動を何とか抑えながら、私は頭蓋骨を護るための毛髪を整える。毛髪はなぜか痛覚が通ってないから、勢いよく切ってもいい。後で頭蓋骨をより慈しめるように、私は毛髪を整える。

「こちらでどうでしょうか?」

「はい、問題ないです」

「それでは、移動しますね」

私はこの瞬間のために美容室で働いている。理想的な頭蓋骨を揉むために。私はそれが溜まらなく快感なのだ。特に、宇宙そのものが詰まっているみたいな、大きな頭蓋骨を揉む瞬間が。



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