天国へ出向。
死神は天国に出向していた。
「なあに、やることはそんなに変わらんとです」
上司の天使はふくよかで、こぶりなカバみたいだった。
「要するに、見る角度を少々変えるだけとです」
「しかし、驚いたな。天国にも殺める部署があるなんて」
フォッフォッという笑い声は、どこか冷笑的だった。
「必要悪……いいや不必要な善、と言えばよろしいか。まぁ、そんなところとです」
ほんわかとした雰囲気で死神は気が抜けていたが、すぐにそんな余裕は無くなった。地獄にいる時は見落としていたが、悪人よりごくありふれた人達の方がよっぽど死んでいる。
「つまり、死を鉄槌として悪人だけに振りかざしていては、世界の形は歪だということですな」
天国説明会の一節がやけに印象的だ。
「われわれ天使も、産神さんも、悪魔さんも死神さんも、要するに同じということですな」
死神はどうせなら天使に生まれたかったと愚痴りながら、今日も交通事故や病魔をランダムに振り分けている。
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