法治惑星。

宇宙人の無条件殺戮に、反抗する手立てを我々は持ち合わせていなかった。宇宙人は、人道的に我々を殺戮してくれるらしい。予定時刻までの数日間、人々は思いの外静かに過ごした。時々暴れる人もいたが、取り合う人がいなかったので、すぐに諦めた。テレビではノスタルジックな番組が放送され、SNSには人生を振り返る#で溢れた。この方が良かったのではないかと思う人も少なくなかった。もちろん、それは宇宙人からの手向けだった。

宇宙人は、徐々に幸福剤の濃度を高めていった。地球上の感情を持つ動物たちが、踊り始めた。熊と人間が、馬と羊が、鳥と魚が手を取り合って踊り耽った。その光景は、ユートピアでありディストピアだった。

人道的な侵略は、宇宙法で定められている。もちろん侵略自体に反対する声も小さくないが、法治惑星だから仕方がない。


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