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人傘取りて。

「雨が嫌なら、私が傘になってあげる」

彼女は本当に傘になってしまった。持ち手は本当に彼女の手だったし、骨組みも何もかもが彼女の身体から作られた。傘職人は、倫理的な瑕疵を職業的な集中で乗り越えてしまった。天晴と言う他がない。

「……その気味悪い傘は何?」

初めてその傘を見る人は、全員怪訝に僕を覗いた。

「死んでしまった友達から作ったんだよ」

「嫌な冗談を言うのね」

本当に彼女から作ったんだけど、信じてくれた人はまだいない。僕と傘職人だけが、彼女であることを確信している。それって、なんだか素敵な状況だ。


予想外の驟雨に、青年は立てかけてある傘を手に取った。取っ手を握った瞬間、青年はそれがかつて生物であったことを確信した。青年は反射的に仰け反り、たまらず傘をなげつけた。骨身が砕ける音を忘れられなかった青年は、後に人を殺めてしまった。

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