紫眼のルカ。

「貴方の瞳は可愛らしくないから、これを付けておきなさい」

母は私が15の頃、コンタクトレンズを贈った。母から受け継いだこの眼は、世間一般で語られるほどの色彩を判別することが出来なかった。母もまたそのことに苦念して育ったようで、あるいはその反動として、瞳の造形や睫毛の長さにとても五月蝿かった。一方で、私は同じような境遇で生きてきた母の意見を信頼していた。(せざるをえなかった、と気づいたのはずっと大人になってからだった。)私はその無味に映るコンタクトレンズを毎朝付けて、高校に行くようになった。


「また、紫眼がこちらを見ているぞ」

紫眼が自分であると気づいた時、私はその怒りの矛先を母親に向けてしまった。

「仕方がないことなの」

母は怒りを憶えるスイッチを、とっくの昔に切ったようだった。思春期の私は、ある感情を諦めてしまった母を受け入れることができなかった。


「君の瞳はとても素敵だね」

「そう。でも、生まれつきじゃないのよ」

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