魂。

脳内には部屋がある。そこには身体を知った相手たちの魂が安置されている。魂自体は形をもたないが、魂から相手の形を構築することは容易い。魂には様々な情報が付帯している。僕が知っている情報も、知らない情報も、確かにその揺らぎの中に存在している。

僕は心を整えて、魂を把握する必要がある。身体を知った相手の一人一人を再構築し、対峙する必要がある。対話をし、その揺らぎが邪になることを防がなければならない。

部屋に留まれる時間は少ない。僕は目の前のことに集中する必要がある。再構築した誰かと、昔話に花を咲かせてしまえば、初めからやり直しだ。何回もやり直してきた。その度に、悲しい気持ちになる。忸怩たる思いさえ感じる。でも、僕はやり遂げなければならない。それを、魂たちも望んでいるから。

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