アレキサンダー。

夢はカクテルで調合できる。スタンダードな夢でいい時はジンベースでいいし、混沌に近いアートな夢に悩まされたい時はハーブリキュールを多くして、瑞々しい夢を見たければ何か季節のフルーツを添える。日々の酒は夢拵えにとても深く関わっている。

僕はギリシア時代の天文学者のように、その関わり合いを律儀に記録していた。その敬虔なノートと職業的勘を組み合わせれば、大体の夢をコントロールすることができるようになった。昨日は大空を飛ぶカエルになってせしめた。ちなみにレシピは、ブルーキュラソーとドライ・ベルモットの1:1に、ありったけのライム。そこに、ちょうど48度になるまでスピリタスをどぼどぼと入れてステアするだけだ。

さて、僕は今日素敵な夜を過ごす夢を見ようと思っている。相手は誰に象ろうか。気になっているあの子なら、カンパリが多めのネグローニ。現実では叶わなかったきみとの夜を過ごすなら、グリーン・アラスカ。そして……理想の彼女と不倫をするなら、アレキサンダー。


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