死者の宴。

「生きている人なんかより、死んでしまっている人の方がずっと多いのさ」

先生は時々私にその言葉を囁いた。

「数え切れない屍の上に、たまたま僕達の生があるに過ぎないんだよ」

私はその頃生に希望を見出していたから、その言葉の意味に肯んずることができなかった。


「生きている人なんか、より……死んでしまっている人の方が、ずっと多いの」

私は行きずりの男の横で、そう呟いた。

「なに、それ」

「生きていることは、それだけでマイノリティである……ということよ」

「へんなの」

生き辛さがぬかるみのように纏わり付くようになり、私は先生の言葉にその活路を求めた。その意味の解釈が完成されてから、私はとても生きやすくなった。生き辛さの概形が分かったからだ。死者は今日も、生者を肴に宴を開いている。

「ねえ」

「なに?」

「もっかいしようよ」

私の姿を見て、きっと先生は囃し立てているのだろう。生者はそれでいいのだ。


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