コケロード。
ある日、道路が苔で埋め尽くされた。苔は厚く繁茂し、良く言えばカーペットのようで、悪く言えば泥のぬかるのような感触だった。人々は突然の出来事に戸惑ったが、社会は一秒たりとも停止することを嫌う。苔の台頭に首を傾げながら、通勤・通学をした。世界中は苔の話題で持ちきりだった。苔にとって、それは初めての出来事だった。
「ねぇ、どう思う?」
「世界が私たちで埋め尽くされること?」
「うん」
「叶うなら、とても素敵だと思うわ」
「叶えてみせるさ」
「ねぇ、あなたってとてもコケティッシュだわ」
剥がしても剥がしても、苔は消えなかった。苔の進撃は留まることを知らず、やがて海をも覆い尽くした。人々は苔に飲み込まれ、地球は苔の惑星となった。
「あなたって本当に素敵だわ」
「結婚しようか」
「はい。お願いします」
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