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疱瘡。

はじめは蕁麻疹かと思った。皮膚に浮かび上がった膨疹は、蕁麻疹のサンプルのようなものだったし、この頃はそれなりにストレスフルな日々に不摂生を重ねていた。これまでには、比べものにならないくらいにメランコリックな日々もあったし、カバの宴みたいに飲み明かし続けたこともあった。それだから、なぜこの期に及んで突然発症したのかは分からない。でも、病気なんてだいたいそんなものだ。僕は痒みを堪えながら、ハーブティーを飲んでいた。

我慢にも限界があるから、僕は深爪で背中を静かに掻いた。そこには、自分の皮膚ではない何かの感触があった。僕は訝しく思って、鏡で自分の背中を確認した。膨疹は脈打つように蠢きながら、一箇所に集積をしていた。僕は気分が悪くなって、眠ってしまおうと思った。ソファーに横たわれば、不思議なくらい簡単に眠りに落ちた。もちろん、そうするべきではなかったのだ。

疱瘡神になった僕は、今日も命を狙われ続けている。でも、あの日眠りから逃げたとしても、一体どうすることができただろうか?


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