流。

流(りゅう)は、一度眠った部屋で二度とは眠ることができなかった。

流がその病(病であると思わずに生きていく強さを、流はまだ獲得していなかった)に伏したのは、親元を離れてすぐのことだった。初めは一人暮らしの昂ぶりが眠りを妨げているのかと、流は楽観視していた。高校を卒業し、二年と四ヶ月(だいたい八ヶ月くらいは繁華街に入り浸っていたから、流はそのように計上している)もの間、浪人生として参考書と向かい合っていたからだ。待ち望んでいたその昂ぶりに、流は違和感を感じなかった。

しかし、一度泥のように眠ってから三日間も覚醒が続いたところで、流はあらゆる可能性を考慮するようになった。あるいは、眠気を感じていなければ、流もそれほど憂慮しなかったのかもしれない。しかし、深夜になれば決まって覚醒していた分の(見ようによればそれ以上の分の)眠気が、流の全身を包み、太陽がはっきり顔を覗かせるまでそれは続いた。眠気に身体を支配され続けることは、流にとって経験したことのない苦役に近かった。流は四日目の夜半、その苦役に耐えきれず外に繰り出した。そして、あっさりと路上で眠りを獲得した。流はその病の概形を認めざるを得なかった。

流は今日も、眠りを探して街を彷徨っている。路上で眠る人の中には、そのような種類の人間もいるから、そっとしておいてやるのもまた人情である。

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