双子。

僕と彼女はどちらも双子の片割れだった。僕には弟がいて、彼女には姉がいた。僕の方は一卵性だけどあまり似てなくて、彼女の方は二卵性なのに黒子の位置くらいしか変わらなかった。僕の弟は三年前交通事故で亡くなって、彼女の姉は三年前バーテンダーと駆け落ちをした。どちらも双子であることに、生きやすさを感じることはなかった。

僕は、彼女の姉に一度会ったことがある。ひとり旅が好きな僕は、旅先でその土地を感じさせる酒場に自然に足が向かう。そこに、彼女の姉はいた。余りにも出で立ちがそのままだから、僕は笑ってしまいそうだった。隣の席に座した僕は、彼女の姉と懇ろに話した。彼女は否定するだろうが、酔いどれの頭で彼女と彼女の姉を峻別することは、小指だけで逆立ちするみたいに難しかった。

彼女も、僕の弟に会っていたのだろうか。死者に会うことは難しかろうが、彼女はその困難をゆうに越えてしまっているかもしれない。僕と彼女が、双子の片割れ同士がこれだけ強く引き寄せ合っていること自体が、いわゆる奇跡なのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?