朝日。

朝方の街を闊歩しているだけで、自分が何か素晴らしいことを成し得たような気分になる。小鳥は囀り、植え込みのヒヤシンスも艶やかな色彩を放つ。肌寒い風すらも、私を祝福しているかのように感じる。私はそのすべての祝福に、頬を綻ばせる。

朝さえも憂鬱に感じることがあった。暗闇を迎合することがあった。酒色に逃げ耽り、明日を忘れんとすることがあった。そのような日々が、ずっと続くのだと信じていたことがあった。

今、朝日が私を照らしている。私をその眼で見るがいい。そして驚嘆するがいい。私はすべての祝福をこの身に受け止めている。上手に酔えている。上手に人と付き合っている。上手に呼吸し、鼓動している。今私を包む多幸感の真実の部分と虚構の部分を概解し、その上で全てを享受している。

朝方の街を独り占めにして、私は大きく息を吐いた。それは、同じ状況を孤独と解釈した、過去の私と決別するための溜息でもある。

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