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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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#短編小説

波止場。

幸せの数だけ不幸せが増える。一度幸せに浸ってしまえば、日常が不幸せに映る。僕達は比べる生…

憐憫。

他者の想像の中で今も生き続けている僕が、現実を生きる僕に語りかける。 「おい」 僕は溜息…

バディ。

「ついに、揃ってしまったね」 バディは性格の悪い悪魔みたいな笑顔を浮かべながら、それでい…

八月の眼球。

なんや今日、目ェぱきぱきするなって思っていたら、眼球が転げ落ちてしまった。でもそこに痛み…

背中の奢り。

恋と呼ぶほどでもなかった。でも僕と君はあの頃、お互いの背中にその全てを預けきって、静かに…

焼き肉。

焼き肉を食べるといつも、あぁ自分もこんな風に死ねたらいいなと思う。自分の生きた肉体を余す…

花を殺す。

今朝、俺はスウェーデンウォッカの瓶に冷凍庫につっこんだ殺風景なそれに)、切り花を移した。こいつは唯一生き残りで、ナデシコだった。他の切り花ははさみで切り刻んでしまって、ある残滓は埃に塗れ、ある残滓は生ゴミと一緒に袋で窒息死をしている。花を殺すことに快感を覚えたのは、ちょうど先月くらいにあった、季節外れの真夏日のことで、汗に厭気が差した俺は青いカーネーションを陵辱してしまった。貞淑な青いお前は、否定もせず俺を受け入れた。それが俺には気持ちがよかった。花は痛いとも辛いとも、生きた

パンセモ。

一七九(モ113/ペ69) 人生の形容詞として、歯車はしばしば濫用される。好転することを、歯車…

スズラン。

「君はバラというより、スズランだね」 かつて関係を持った教師は私をそう評した。例に漏れず…

袋詰の生涯。

あぁ、やるせない。俺は袋の中で生まれてしまった。なぜ俺が思考しているかは分からない。周り…

光の彼方へ。

1年ぶりの健康診断で、右の視力が上がっていることが発覚した。僕は元より不同視で、右眼は1あ…

波打ち際の落書き。

五年ぶりに来た彼からの連絡は、同窓会の誘いだった。名前を見ただけでどこか面映ゆくなるよう…

マゾヒズム宇宙。

乳房がなる木々を抜ければ、一方通行な無重力がはじまる。電源のオンオフがある訳では無い。乳…

恋12年。

恋がウイスキーを追い越してしまった。 シーバスリーガル12年。僕はそのラヴェルを見て、過ぎ去った過去に思いを馳せた。フレンチオークから琥珀色が溶け出す間中、君は感じの良いコロポックルみたいにみたいに僕の心に棲み着いていて、僕が抱いた恋心もかつてから熟成されている。この12年がいささか香ばしいものであったから、とても味のある仕上がりになった。 僕はその700mlを、一思いに飲みきってしまうことができる。君が目の前にいたら、きっとそうするだろう。12年という長い歳月は確かに貴