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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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#ショートストーリー

べむべむ。

はやく人間になりたいとは思っていたけれども、こんなに良いものだとは露も思わなかった。ご飯…

程度。

一度裸を見た相手から、自分が消え去ってしまうことが何よりも苦しかった。たとえ風で折れてし…

敗者。

「煙草、やめなよ」 彼女が僕に箴言をしたのは、これが最初で最後だった。 「どうして?」 …

夢幻の旅路。

あぁ、ただ永遠に夢を見ていたい。どんなにちんけな夢でも良いから、永遠に覚めないで欲しいと…

波止場。

幸せの数だけ不幸せが増える。一度幸せに浸ってしまえば、日常が不幸せに映る。僕達は比べる生…

憐憫。

他者の想像の中で今も生き続けている僕が、現実を生きる僕に語りかける。 「おい」 僕は溜息…

バディ。

「ついに、揃ってしまったね」 バディは性格の悪い悪魔みたいな笑顔を浮かべながら、それでいていささかの悔恨が残るような、感情が混沌と入り乱れた表情を浮かべていた。嘘と現実が混濁して、彼自身もそれが悪い冗談だったのか、本心だったのか、判別ができないようだ。でも僕の方は、なぜかとても堅牢に覚悟が決まっていた。(覚悟と呼ぼれるもののほとんどは、技量というより運命の匙加減なのかもしれない)僕達はこれから、バードストライクを偽ってこの飛行機を堕落させる。航空学校からの約束が、ついに果た

八月の眼球。

なんや今日、目ェぱきぱきするなって思っていたら、眼球が転げ落ちてしまった。でもそこに痛み…

背中の奢り。

恋と呼ぶほどでもなかった。でも僕と君はあの頃、お互いの背中にその全てを預けきって、静かに…

焼き肉。

焼き肉を食べるといつも、あぁ自分もこんな風に死ねたらいいなと思う。自分の生きた肉体を余す…

花を殺す。

今朝、俺はスウェーデンウォッカの瓶に冷凍庫につっこんだ殺風景なそれに)、切り花を移した。…

パンセモ。

一七九(モ113/ペ69) 人生の形容詞として、歯車はしばしば濫用される。好転することを、歯車…

スズラン。

「君はバラというより、スズランだね」 かつて関係を持った教師は私をそう評した。例に漏れず…

袋詰の生涯。

あぁ、やるせない。俺は袋の中で生まれてしまった。なぜ俺が思考しているかは分からない。周りの羽虫はただのたうち回るばかりで、俺の言葉に答えてくれない。酸素が薄くなり、頭がぼおっとしてくる。為す術はない。俺が奇跡的に獲得できた思考をもってしても、きつく結ばれた袋から脱出する方法は思いつかない。 俺は人間を悪いとは思わない。袋の中で蠢く俺たちを見て、人間は蔑みの視線をぶつけた。恐らく、俺たちは忌み嫌われる存在なのだろう。俺たちが何の害悪になるのかは分からないが、わざわざきつく縛る