マガジンのカバー画像

一万編計画

1,230
一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
運営しているクリエイター

#一万編計画

イコーリィラヴ。

愛してるお前ら全員と結婚をしたかったから、俺は身体を分割することにした。それが俺に出来る…

べむべむ。

はやく人間になりたいとは思っていたけれども、こんなに良いものだとは露も思わなかった。ご飯…

程度。

一度裸を見た相手から、自分が消え去ってしまうことが何よりも苦しかった。たとえ風で折れてし…

敗者。

「煙草、やめなよ」 彼女が僕に箴言をしたのは、これが最初で最後だった。 「どうして?」 …

夢幻の旅路。

あぁ、ただ永遠に夢を見ていたい。どんなにちんけな夢でも良いから、永遠に覚めないで欲しいと…

波止場。

幸せの数だけ不幸せが増える。一度幸せに浸ってしまえば、日常が不幸せに映る。僕達は比べる生…

憐憫。

他者の想像の中で今も生き続けている僕が、現実を生きる僕に語りかける。 「おい」 僕は溜息をつくことしか出来なくて(それでいて、儚げなアイデンティティを捨てきれないままで)、有耶無耶に無視をしようとするけれども、想像の僕は止めることなく続ける。 「おい、お前はすでに終わってしまったんだね」 それは侮蔑と言うより憐憫だったから、僕は逆撫でされたけれども、在るべき彼に諭された言葉が身に染みすぎて、文字通り身動きが取れなくなった。 「おい、終わってしまった君は、僕と変わった

バディ。

「ついに、揃ってしまったね」 バディは性格の悪い悪魔みたいな笑顔を浮かべながら、それでい…

八月の眼球。

なんや今日、目ェぱきぱきするなって思っていたら、眼球が転げ落ちてしまった。でもそこに痛み…

背中の奢り。

恋と呼ぶほどでもなかった。でも僕と君はあの頃、お互いの背中にその全てを預けきって、静かに…

焼き肉。

焼き肉を食べるといつも、あぁ自分もこんな風に死ねたらいいなと思う。自分の生きた肉体を余す…

花を殺す。

今朝、俺はスウェーデンウォッカの瓶に冷凍庫につっこんだ殺風景なそれに)、切り花を移した。…

パンセモ。

一七九(モ113/ペ69) 人生の形容詞として、歯車はしばしば濫用される。好転することを、歯車…

スズラン。

「君はバラというより、スズランだね」 かつて関係を持った教師は私をそう評した。例に漏れず自分の行いを正当化するクズだったが、数年前に亡くなった。 「バラの方、分かりやすくていいじゃない」 教師は、まるで教え子を諭すように続ける。(言っておくけど彼はみすぼらしいくらいに裸だ) 「君はその棘を隠すじゃないか。でも、好きなんだ。君が持つ、そういう陰湿な美しさが」 彼がスズランのブーケを買ってきた時、私の背筋には氷柱が走った。 「君にぴったりじゃないか」 私は情動的にな