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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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2022年6月の記事一覧

離脱症状。

眼球を埃でこそばされているような居心地の悪さ。眠気というよりかは、覚醒状態に対しての拒絶…

オーヴァー。

オーヴァー。閾値を越えた運動。必要な酸素を摂取しきることができず、脳が燃える。身体の節々…

パラレルワールド。

よもや、パラレルワールドは宇宙の外側に存在していると思っていたが、それは大きな間違いだっ…

白詰草の庭。

どれほど美しいものでも、飽和点は存在する。 白詰草で溢れる庭があった。それは違和感を憶え…

日曜日の孤児。

私は自分を孤独だとは思わない。周りには友達だっているし、先生はとても優しい。ほんの少しの…

希薄。

AM10:30。脳が溶け出した感触で目が覚める。夢と現実のどちらにいるのか、見当がつかない。夢…

余命ガチャ。

ある男は、余命ガチャを回すか悩んでいた。 「お兄さん、思い切っていかがですか」 国家は余命ガチャを推進しているため、公務員が客引きをしている。 「うーん、どうしようかな」 「思い立ったが吉日ですよ」 「……よし! 決めた」 男は覚悟を決めて、ハンドルを強く回した。的玉のようなカプセルが、吐き出される。男は息を飲んで、カプセルを開いた。 「うわー、3日だった」 男は天を仰いだ。 「でもね、お兄さん。これでその3日を、思いっきり生きることができるよ」 初め

綱渡り。

青年はイニシエーションとしての綱渡りを、今まさに迎えようとしていた。 「下を向いてはいけ…

雨女。

雨女(あまめ)はその名前の通り、芸術的な雨女だった。彼女が扉を開いて外界に足を踏み入れる…

輝夫。

輝夫はある種の病であるかのように、美しいカクテルを作ることができた。どれほど安い酒であっ…

櫻子。

櫻子は、自分が春に生を受けたと信じることができなかった。勿論、便宜上の誕生日は4月X日であ…

陽人。

陽人は、暗闇で眠ることがどうしてもできなかった。それがいつからなのか、きっかけが一体何で…

夏の日のアブサン。

悪魔。私は蒸し暑さに抱かれて、否応がなしに瞼を開く。気怠さで飽和した部屋は、射し込む陽光…

ラディゲより生きて。

故人の作品は、更新がなされないから好きだ。往々にして、長きに渡る更新は総体として負の影響が大きい。勿論、そうでない偉人も少なくはないが、隠れている数多がそうであることもまた事実だ。それだから、更新がなされない故人の遺物が、私は好きなのだ。 その中でも、夭折した人によるものが私は特に好きだ。何よりもその人の作品を味わい尽くすことができる。数少ない作品に、彼ら彼女らの萌芽を見て取ることが出来る。自らの死を作品の一部に組み込む人もいるが、本当に偶然死んでしまった人もいる。好む好ま