希薄。

AM10:30。脳が溶け出した感触で目が覚める。夢と現実のどちらにいるのか、見当がつかない。夢の中で目が醒めていることだってあるし、覚醒と覚醒の狭間に夢を見ることだってある。僕は溶け出した脳を、ゆっくりとナプキンで拭き取る。この作業は丁寧に行わないと後々面倒だから、とても時間がかかる。AM11:13。僕はそれが現実の床であるとようやく暫定し、ベットから身体を起こす。

PM13:00。丁度ではなかったかもしれない。僕は、信じ切っていた記憶がまやかしであったことに思い当たる。それは余りにも現実の装いを呈していたから、夢であったことに気付けなかったのだ。記憶に影響を及ぼすほどの夢を見たのは、これで何度目だろうか。人の記憶が往々にして不確かであることは、このまやかしに起因するのではないかと思う。夢の中で理想を模写することで、人は過去の自分をも編集する。それはまったく不確かなものなのだ。

虚ろな日々を過ごすと、現実は希薄する。まやかしに合わないためには、現実の方を確かに生きる必要がある。しかしそれは、ある意味では夢に生きることより過酷であることが多い。

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