ガチパラっ! (9)
「神社に逃げたから助かったって人、たくさんいたんですよね、震災で」
無事、兵庫県は坂越湾にたどり着いた、アナたちは、少し高台にある神社にいた
この神社からは、湾を一望できる
バラ子さんが呟くように、そんなことを口にした
一緒にカキの活動をしていると、宮城や岩手、つまりは三陸に行くことも多い
そこで、震災の爪痕をたくさん観てきたし、意図せずとも様々な話を現場から、生産者たちから聴くことになる
坂越湾は、ちょうどカキの産地だから、ふと思い出してしまったのだろう
あれからもう10年か、早いもんだ
なんだかホロっとなってしまっているバラ子さん
三陸に津波が押し寄せたときに、高台にある神社に避難した人たちは、みな無事だったという話は有名
「神社って、スゴいみたいですね。ほら熊本の阿蘇山が噴火しても、すぐ近くにあるのに、溶岩が避けてなんともない神社があるって」
物知りアナちゃん
「神社で助かったんですか?」とかではなく、いきなり、そこなのね
ここは、とりあえずバラ子さんに語らせてあげたら…
「え?溶岩が避ける神社があるの?」
バラ子さん…
「そうなんですよ。だから、こないだも阿蘇山が噴火したときに、そこに避難してた人たちは大丈夫だったって」
たしかに、その神社だけ、溶岩の被害もなく、土石流の被害も受けなかったことがニュースにもなっていた
奇しくも、この神社の名前は、大きく避ける、と書いて「大避神社」
あ…、バラ子さん、それで連想したのか…
「昔の人たちってスゴかったのね」
「ですよね!なんでわかったんでしょう…」
そこは知らないのか
多少、夢というか、せっかく抱いている先人たちへの尊敬の念や、描いている幻想を打ち砕いてしまうかもしれないが、
ここは、立場上、正確な情報を伝えておくべきだろう
「馬券を全部買ったら、全通り買ったら、どうなる?」
「必ず勝ちますね」
「そ、そういうこと」
「え、どいうこと?」
バラ子さん
「ん?…あっ…!」
アナちゃん
「古くからある神社ってさ、いろんな災害とか、いろんなことがあったけど、それでも遺ってるってこと」
「なんだ、そういうことかぁ」
「いろんなことがあっても大丈夫だったところに建てたりね。昔は食糧を備蓄したりして、避難所の役割も担ってたんだ」
たいていの神社には、いざというときのために食糧を保存していた社がいまも遺っている
ある意味、長年の成果だよね
それこそが先人の知恵であり、先人の遺産
自分が住んでいるところの地名とか、昔はなんて呼ばれていたか、とか調べると面白いかもしれない
案外と災害対策、災害を避けられるかもしれませんよ
そのあとも、灯籠の秘密とか、
だから、灯籠はマスクしてるんだよ、とか
そんなことを貝説…もとい解説しながら、境内に入っていく
飾られている絵たちは、時を経て煤けたり、薄れてしまっているが、一枚だけ、ハッキリとキレイに残ってる絵があった
「あ!さっきのカキの生産者さんと同じ顔!なんで?なんで??」
そうこなくちゃね
「それはね…」
(10)に続く☟
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