ガチパラっ! (10)
「あ、あのカキの生産者さんだ…そういうことかぁ」
広間に置かれたモニターで、神社の祭りの映像を観始めたところで、アナが呟いた
山の中にある神社をでて、坂を降ったところにある案内所
赤穂浪士で有名な赤穂藩の殿様の別荘を改築したという
小さな案内所の中に、坂越浦の歴史が詰まっていた
最近つくられたという観光用の紹介映像の中に、先程の神社に祀られていた「絵」と同じシーンを見つけたのである
「というわけで、あの絵だけ新しいのさ」
物知りアナちゃんとしては、気づけなかったことが、少し口惜しそうだ
神社もだが、古い建造物や遺跡など「そこにあるものは古い」という先入観が、ヒトの感覚を狂わせる
勝手に、古くからある絵を修繕したものだとか判断し、まるで、そこにミステリーがあるかのように錯覚してしまうのだ
この絵の場合も、最近、描かれて奉納されたもの
当然、実在して現存しているカキの生産者が描かれていて然るべきなのだが、
それを古いものだと勘違いしてしまうと、クローン?であるとか、代々血を護り受け継がれてきた物語が浮かんでしまったりする
イギリスの古い教会が修繕したときに、さりげなく宇宙飛行士と宇宙船らしき像を、外壁に埋め込んだ
あくまでユーモアのつもりだったらしいのだが「大発見!」と謳われニュースになったりしたことも記憶に新しい
「本当のミステリーなんて、ありそうでなかなかないものなんですね…」
「遺跡の発掘現場での偽造や偽装が、殺人の動機みたいなミステリー小説とかはあるけどね」
そんな残念そうなアナちゃんに朗報だ
「実はね、さっきの神社なんだけどね、本来なくちゃいけないもの、本来あるべきものがないんだ」
「え!じゃ、さっきの神社に戻らないと…」
「いや、その謎を解くカキ…もといカギは別の神社にあるんだよ」
(11)に続く☟
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