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シン宝島

その島にある不思議な「実」は
あらゆる病が立ちどころに治るという

しかも、エモ言われぬ味は
この世のモノとは思えない
食べたら忘れることはできないという

ただし、島は絶海の孤島
どこにあるのかも定かではなかった

あるとき独りの男がたどり着いた
不治の病を患う最愛の人を救うため

たどり着いたはいいが
荒れる海を行き来するには
船乗りが必要だった
島の秘密は護るという約束で
船乗りを雇った

雇うためには「実」を売るしかなく
その噂がどことなく拡まる

男と船乗りは財を成した

船乗りが派手に遊ぶうちに
女のひとりに秘密を話してしまった

弟と名乗る輩と現れて
秘密を護る代わりに
仲間に加えろと言い出した

最愛の人も救えたし
財も成せた男は
自分の島の権利を
船乗りに売り渡し島を去った

弟と名乗る輩は
実は女の情夫でもあった
島の乗っ取りを画策し
そして船乗りを殺した

絶海の孤島でのことだ
誰にもわからないはず

ところが船乗りらしく
自分が長期間戻らない場合に
助けが来るように手配していた

船乗り仲間たちに知られると
島に人が訪れるようになった

そうなってしまったら仕方ないと
「実」を販売するビジネスが始まった

大量に伐採され
あっという間に「実」が
無くなっていく

慌てて大量生産に乗り出す
ところが島から持ち出すと
効果効能が失われてしまうようになった

病が治らない上に
味も落ちるどころか
食べられた代物ではなくなった

それならばと
島に来てもらえばいい
ホテルなど宿泊施設が整備された

なにせあらゆる病が治るのだ

そもそもたどり着くのが
大変な絶海の孤島とはいえ
高い船賃を払ってでも
多くの人が訪れるようになった

「実」はさらに
大量生産できるように改良され
島は観光業も潤うようになった
ホテルやレストランも増えた

邪魔な虫は農薬で
害を成す獣は駆除され
蛇やネズミを捕るために
放たれた猫は増えた

そんなある日「実」は完全に
その効果効能を失ってしまう
味も落ちるどころか
食べられた代物ではなくなった

「実」を失った島には
あっという間に誰も訪れなくなった

残されたホテルや観光施設は
島の他の魅力を探したり
施設をさらに充実させるなどした

それでも「実」には叶わない

なんとか育てようと
あの手この手が尽くされるが
枯れてしまうか
出来ても以前のような
効果効能はなかった

「実」は繊細だったらしい

そもそも人が
たどり着きにくい島だった

広告宣伝費がバラまかれ
さらに充実した船が造られたり
空港がつくられたりもした
橋を建設する話まで持ち上がる

そもそも人が
たどり着きにくい島なのだ

そんな観光地ならば
他にもいくらでもある

広告宣伝費の効果がでた
乱気流で飛行機が墜落し
嵐で船が転覆したことが
大きな話題となったのだ

誰も訪れなくなった島からは
またひとりまたひとりと去り
そして誰もいなくなった

いつしか島も実も
人々の記憶から消えていく

ヒット映画でさえ
すぐにネット配信され
半年も経たずに話題にもでない
あっという間に消費されてしまう
そんな時代だ

どれほどの歳月が流れただろうか
独りの男が島にたどり着いた
どうやらあの男の子孫らしい

ふと目をやると
もうひとり人がいる
どうやら船乗りの子孫らしい

家になにかしらの
言い伝えでもあったのだろうか

誰もいなくなり
長い年月を経た島

「実」は病は治らないものの
エモいわれぬ味は戻っており
島から持ち出しても大丈夫になっていた

2人はSNSなどネットを駆使して
「実」が育つ分だけ
限られた人に伝わるようにした

そこで得た資金を元に
島に遺された豪華な施設を
リノベーションして
「実」が失われないように
環境に配慮して暮しましたとさ

めでたしめでたし

本日もご精読感謝🙏


こんな話が浮かんでしまった上にカキだしてしまった背景には、きっとこの記事を書かれているコージ・ヤマモトの影響というか

なにかしらのインスパイアが…ということで冒頭のお写真をお借りしました…この写真の「実」が実は…

きになる…いやいやバナナは 木になる のではなく…☟

僕も絵本を読むだけ、写真を見るだけで環境に配慮できるプロジェクトをやっております

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