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『樹木希林120の遺言』

ようやく読み終わった本の感想を書きたいと思う。

まずはこちらの本の感想から。

樹木希林というおばあちゃん

樹木さんのイメージと訊かれたら、私の中では「最初からおばあちゃんな人」だ。

いつだったか記憶は定かではないが、テレビで『寺内貫太郎一家』を観たことがあって、ジュリー大好きおばあちゃんの役をされていた樹木さん(その頃は芸名は悠木千帆さん)が、ものすごく印象に残っていた。
しかも後から、その当時の樹木さんは31歳と知ってとてもびっくりしたものだ。

今の私とほとんど変わらない年齢でおばあちゃん役をやるって、どんな気分だったんだろうと思った。
まだ経験したことのない『年寄り』という役をその年齢で作り上げ、見ている側に違和感も全く与えないのは、そう簡単なことではないと思う。

そんな樹木さんが亡くなったのは、今でも記憶に新しい。

私は、彼女の出演作をものすごく見ていたわけではない。
『万引き家族』だって見ていないのだ。

ファンというにはとても浅い私だけれど、樹木希林さんという女性がとても好きだったのだ。
その理由はいろいろあるのだけど、この本を読んでみたことで、その理由がはっきり見えてきた気がする。

抗わない。受け入れる。面白がる。

私は年を取ることをあまり嫌だと思ってない方で、自分もいつか白髪のおばあちゃんになるのかなとか思うと、ちょっとわくわくしてしまう。
しかし、私がそのことを母に言うと、母から「一気に白髪になったり、おばあちゃんになれるならいいけど、その間にはおばさんっていう時期があんのよ」と返されたことがある。

それを思ったらちょっとやだなとか思ってしまった自分が居た。
少しずつ衰えてゆくって、ちょっと不気味な感じ。
20歳を超えて徹夜ができなくなったり、20代半ばを過ぎて風邪や吹き出物の治りが悪くなったりしたとき、ちょっと怖いと思ったものだ。

そうやってちょっとずつ、これからも年を取っていくわけだけど、樹木さんの言葉を読んで、怖がってちゃいけないなと思えるようになった。

年を取るって、絶対に面白いことなの。
若い時には「当たり前」だったことができなくなる。それが不幸だとは思わない。そのことを面白がっているんですよ。

この言葉はとても私にとって大きかった。

人生は「楽しむもの」ではなく、「面白がるもの」。

よく聴くのは「人生楽しまなくちゃもったいない」という言葉だけど、楽しめるほど人生甘くないのも現実。
でもそんな甘くない現実さえも、面白がって見てみたら、何か違うものが見えたり、生まれたりするのかもしれない。

年を取ることも、自分であることも、人間として地球に生まれ落ちたことも、いまさら変えようのない現実なのだから、それを悲観するよりも面白がって、観察して、ケタケタ笑いながら生きていられる方がずっといい。

どうぞ、物事を面白く受け取って愉快に生きて。
あんまり頑張らないで、
でもへこたれないで。

『愉快に生きる。』
私のこれからのモットーにしたい言葉になった。

壊しながら、つくっていく

創造の創は「きず」という字なんですよね。
「絆創膏」の「創」っていう字なんですよ。
やっぱり、ものをつくるっていうのは、ものを壊してつくっていくことなのね。どっかに傷をつけながら、そこを修復するっていうか。

この本全体を通して、私が一番好きな言葉だ。

私は学生時代から、何かしらずっと作り続けてきた人生だった。
絵を描いてみたり、詩を書いてみたり、歌を作ってみたり、手芸作品を作ってみたり。
本当にいろいろ創ってきたと思う。

『何かをつくる』ということは、毎回痛みを伴った。
『産みの苦しみ』というのだろうか。
作りたいのに届かないような、見えてるのに触れないような、とにかく苦しい時が多い。

きっとどんなフィールドにいても、この痛みはつきものなんだろうと思う。

何かを創造することは、命を削ることだと思っているから、痛くても苦しくても、どこか傷を作りながらやっていくしかないんだなぁと、この言葉で再確認できたような気がした。

「上出来な人生」と言って死にたい

読書感想文って昔から得意ではなかったけど、大人になっても苦手なものは苦手なままだなと思う。

まだまだ言葉との付き合いを深くしていかないとだな。

でもこんなに気楽に本を読んだのは初めてだったかもしれない。

きっと樹木さんの言葉は、「えー?だってそんなもんでしょう?」って感じのとても脱力した言葉ばかりだったからだと思う。
おばあちゃんに人生相談してるみたいな気持ちで読めるので、またいつでも何度でも読みかえしたいと思う。

この本の最後にはこう書いてある。

今なら自信を持ってこう言えます。
今日までの人生、上出来でございました。
これにて、おいとまいたします。

私も自分の人生を「上出来だった」と言ってこの世を去れるように、
自分にできる範囲のことを、面白がりながら、愉快に生きていこうと思う。

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