見出し画像

売上につながらないサービスの重要性

ECの普及により、顧客の買い物環境が大きく変化した。

高騰する人件費や家賃などの経費を、店頭の利益だけで賄う従来の小売のビジネスモデルは、もはや限界が来ている。

店舗が生き残っていくためには、体験を提供する場へシフトしていくことは、避けられない流れになるだろう。

今まで、多くの店舗の目的は、営業利益を最大化させることだった。したがって、店頭における接客や販促活動など、あらゆる店舗サービスは売上をアップさせることが目的だった。

しかし、店舗の役割が、体験を提供する場に変わるとき、それにあわせて店舗のサービスも変えていく必要がある。

店舗が体験の場になることで、これまで以上に、顧客に足を運んでもらうための工夫が大事になる。
言い換えれば、コストをかけてでも来店したくなる動機を、店舗は用意しなくてはならない。

その際に、ポイントになるのは、顧客との関係づくりを重視することである。

顧客と店舗が良好な関係を築くことで、店頭が活性化し、体験を提供する場としての価値が増す。

そして、提供するサービスも、従来の売上に紐づいたサービスから、関係づくりにウエイトをおいた店舗サービスへのシフトが求められる。

例えば店頭での接客において、関係づくりを目的とした顧客へのアプローチは、「何を買おうとしているか?」から「何を求めているか?」に変化する。

それは商品のアドバイスかもしれないし、売場を探しているのかもしれない。あるいは対人サービス自体を求めていないのかしれない。
顧客のマインドを察知し、求めている店舗サービスを提供することが、優先事項になる。

「買わせよう」と考えるスタッフと「買わされそう」と感じる顧客は、店舗サービスの軸足が変わることで、お互いにプレッシャーから解放され、気持ちの良い買い物を体験をすることができる。

また、関係づくりで大事なのは、顧客が店舗を体験することであり、取引が成立するかどうかは二の次になる。

これは取引が成立しなくていいと言っているのではなく、顧客とよい関係を築いたほうが、結果的に取引が成立しやすくなり、長くビジネスが継続できるということである。

短期的な利益を求めると、売上の最大化は果たされるかもしれないが、いずれどこかに無理が生じて、長期的にビジネスを続けることはできない。継続できないビジネスは顧客へ裏切りとなってしまう。

目先の売上を追いかけるよりも、長く安定して事業が続けられるように、顧客との関係づくりを強化して、店舗の足腰を鍛えることが重要である。

そのためには、顧客との関係づくりにとってプラスになるのであれば、従来のKPIには含まれないような、売上につながらない店舗サービスにも目を向けることが望ましい。

一例を挙げると、百貨店や専門店などでは、雨の日に購入した商品が濡れないように、紙袋の上からビニールをかけるサービスを行う。

ビニールをかけることで、売上がいくらアップするかを定量的に測ることはできない。そのため、従来のように売上がKPIの場合、軽視されがちなサービスだった。

しかし、関係づくりにおいては、このような数値には表れない小さな取り組みが、大事になってくる。

体験する場への移行は徐々にであるが、確実に始まっている。来たるべきときに備えて、今のうちから関係づくりに軸足をおいた店舗サービスを取り入れることが、店舗の生き残りにとって、何よりも重要になるのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?