攻略本のある世界で
オフラインでの活動が制限されたことで、小売のEC進出はますます加速することになる。
実際に今回の事態が後押しとなり、新しくECを始めるブランドも増えてきている。
既存の小売や飲食店にとっても、リスクヘッジの手段として、ECの在り方を再認識することとなった。
一方で、オフラインのデジタル化も進んでいく。
すでに中国では、生きたロブスターをデータ化することも可能になっている。
日本でも、東急ハンズがNTTと共同で、商品のマッピングサービスの開発に着手している。
ECの拡大と、オフラインのデジタル化が進むことで、オンラインとオフラインの境界線が、曖昧になる。
デジタルとリアルの緩やかなグラデーションの中で、我々は未来を生きるのである。
これは大規模小売に限った話ではなく、市場が拡大することで、導入コストが下がり、小規模小売でも導入が進んでいく。
オンラインが生き渡ることで、あらゆるデータが集計可能になる。
今まで個人の感覚に頼っていたものは、デジタルの世界では言語化され、可視化される。
そして、これまでと大きく変わるのは、予測精度が大きく向上することである。
現在でもPOSなどでは、何が何個売れた、どの時間に売れた、というデータは集計できるが、あくまでそのデータは結果である。
これからは、センサーやカメラと組み合わせることで、オフラインでの予測の精度が大きく高まる。
それは、ロールプレイングゲームで言えば、最初の村で攻略本を渡されるようなものである。
今から向かう町で何が起きて、次のダンジョンでどんなモンスターが現れるか知った上で、冒険に出ることになる。
そこでは、決められたストーリーをなぞることに意味はない。
言い換えれば、クリアすることには価値がなくなっている世界ということでもある。
あらゆることが予測可能になった世界で、人間がするべきことは、個人に焦点をあてることである。
つまり、ピープル(人々)ではなく、パーソン(個人)に力を入れるべきである。
ピープルの需要や行動は、データで予測可能である。
パーソンに向けたサービスが、これからの世界で、人が担っていく役割になる。
例えば、三越本店のコンシェルジュデスクのようなサービスが、データの活用も相まって、大小のあらゆる規模で需要が高まってくると考えられる。
そこで求められるのは、人の温もりである。
そして未来の店舗は、パーソンとの接点の場所になるのである。
デジタル化された世界では、すでに予測という攻略本が手渡されている。
攻略本をどう使うかは、人間次第なのである。
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