【第25回】ゆるゆるM&Aセミナー:超ざっくりM&A会計処理(のれんと譲渡損益)
日本一ゆるゆるなM&Aセミナーです。気楽に読んでください。
バリュエーション、そして投資採算がわかったところで、もうひとつ大事なことがあります。
それは、このM&Aが自社の財務会計にどのような影響を与えるのか、すなわち、この取引によって、
(当期に)損が出るのか益が出るのか?
詳しくはストラクチャによって異なること・専門的な会計知識が重要なことからDD以降に詳細検討が必要ですが、ここではIM受領後、Indicative Offerにて価額提示をするにあたって超ざっくりと損益状況を把握しておく必要がありますので、説明しますね。
■のれん
ざっくりいえば、「買収対価-時価純資産=のれん」となります。
なぜ簿価純資産でも株式価値でもなく、時価純資産を引くのでしょうか?
それは、買収後に自社のB/Sには資産・負債を時価換算して計上するからです。このときの時価換算とはバリュエーションの話ではなく、まさに譲渡対象資産や負債それぞれ一つ一つ(例えば保有している土地・建物・車両や設備、流動資産・・・)の時価を換算していくことです。
これをPPA(Purchase Price Allocation:ピーピーエー)といいます。実際は買収後、次の年度末決算に向けて行われる会計作業です。
これによって、時価資産‐時価負債=時価純資産と買収価格との差額が発生します。
この差額が正数の場合は「のれん」として、資産計上します。(負ののれんに対して、正ののれんということもあります)
ただし、この段階で資産・負債の時価は正確にはわかりませんので、超ざっくり試算においては普通にB/Sの簿価純資産で代用しちゃいます。
「のれん」は、会計上は20年以内に償却します。通常は投資採算において期待する回収期間に応じて償却期間を設定します。
つまり、
P/L上は出資・買収時には損益発生はなく、その後、一定期間にわたって毎年償却コストが発生する
ということになります。
なお、税務上は5年償却となり損金算入できます(但し株式譲渡の場合はのれんの償却は認められません)
※損金算入:税務上費用として認められ、法人税計算時に課税取得から控除できるということです。
■負ののれん
買取価格-時価純資産が負の場合、「負ののれん」が発生します。
この場合は、
負ののれんは資産としてB/Sには計上せず、取引時点で全額特別利益として処理してしまいます。よって、償却も生じません。
税務上は正ののれんと同様、5年間で償却されます。(課税所得に加算されます)
■売り手の場合
売り手の会計処理は簡単です。
対象資産・負債はすでに簿価としてB/Sに計上されているので、その差額である簿価純資産と売却対価の差額が、譲渡に伴う特別損益となります。
こちらは当期のP/Lに反映されます。
この損益は譲渡益課税(キャピタルゲイン)と呼ばれ課税対象となります。
日本の法人の場合は、法人税に含まれて課税されますが、海外企業の売却においてはそれぞれの国によって状況が変わるので留意が必要です。
また、譲渡価額が著しく低い場合は、その事業を買い手に贈与したと捉えられ、譲渡損を損金参入できない懸念があるので注意が必要です。
■まとめ
買い手の場合はのれんが発生します。
期間償却されますので、買収後のP/Lへの影響を視野に入れながら買収対価を考える必要があります。
売り手の場合は即座に譲渡損益が発生しますので、当期P/Lへの影響を考えつつ売却価格を判断しましょう。
それでは、次回もお楽しみに☆
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