第81話 見抜く力
真奈美は資料にそって順々に説明し、宮津精密との面談結果まで説明を終えたところで一旦区切った。
「ここまでで、ご不明点等ございますでしょうか」
鈴木は小難しい顔をして考え事をしている。
「……ようは、この会社にプレマネー90億円を認めろってことなんだよね?」
「はい、そのような要望をいただいております」
「おれにはこんな中小企業にそんな価値があるとは思えないんだよね」
鈴木は眉間にしわを寄せながら続けた。
「売り上げ50億円、EBITDA8億円。事業計画は来年から都合よく成長しますってことだけど、根拠ないんでしょ?」
さすが、投資銀行でバリバリ働いていた実績がある鈴木はすぐに状況を見抜いた。
「その点はもう少し分析を深めておりますので。酒井さん、説明を続けてくれるかな」
山田はあえて反論はせずに、一旦すべての説明を終わらせる方向にかじを切った。
「は、はい。それでは、ご指摘いただきましたバリュエーションの分析から説明を続けさせていただきます」
ここからは真奈美にとっては自信がない領域だ。
それでも、日曜日に自宅でなんども資料を読み直し、山田からもらったエクセルファイルを見直し、参考書で復習もして……なんとか自分なりに理解したつもりだ。
(おかげで日曜日も仕事漬けだったけどね……自信持て、私!)
真奈美は説明を再開した。
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