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連載小説「転生ビジネス・カオスマップ」第七部 第23話 尋問

「目的は何ですか?」

 ユナの尋問が続く。
 冷酷な表情で、敬語を貫き通すので余計に怖い。

「別に言わなくてもいいのですよ?
 重力子銃を確保モードから収縮モードに切り替えてもいいんです。
 どちらがいいか、決めてくださいね」

 確保モードは、四次元重力井戸を作り出し対象者を生け捕りするモード。
 収縮モードは、重力特異点、すなわち超ミニブラックホールを作り完全に対象物を圧縮消滅させるモードだ。

 正直、どちらのモードで撃たれても地獄には変わりない。
 残る一人のチンピラは、腰を抜かしてガクガク震えて声も出せない。

「メイさん、この方、どうしましょうか?」

 私は、ハルトに支えられてようやく気持ちが静まってきたところだった。
 確認しなきゃいけないことがある。

 チンピラを見下ろす。
 
「私が誰か、知っていて狙ったの?」
「し、知らない。何も知らないんだ。
 町で歩いている君らを捕まえるように、ボスに電話で指示されただけだ」
「ボス?」
「この町を牛耳るマフィアだ」
「私を捕まえる理由は?」
「何も聞かされていないんだ」

 ユナが銃口をこめかみに近づける。
 チンピラは、涙を鼻水を流しながら許しを請う。

 どうやら、トカゲのしっぽね。
 本当の犯人につながる情報は聞き出せそうにないわ。

「ところで、やっぱり見ちゃったんだよね?私の……
 だとしたら、やっぱり収縮モードで抹殺するしかないわね」

 私は、思いっきり憐れむ目でチンピラを見下ろす。

「か、勘弁してくれ。みてない、みて、みてない……」
「大丈夫よ。死んでもヴァーゴ社が転生マッチングを手伝ってあげるわ。
 もちろん、転生費用はいただくけどね」

 当然、このような無法地帯で非合法的な誘拐仕事を続けているチンピラに蓄積されるカルマはゼロだ。転生費用など払えるはずもないのは百も承知。

 私はにこやかに微笑むと、ユナに向かって苦笑と共に頷く。

 ユナはモードは切り替えず、確保モードのままトリガーを引いた。
 断末魔と共に、重力井戸に確保されるチンピラ。

「圧縮モードじゃなくて、確保モードのままで、本当に良かったのですか?」

 私の表情を読み取ったユナは、銃をスカートの中に戻しながら聞く。

「まあ、十分恐怖は植え付けてあげたからね。
 触られてたら勘弁しなかったけど。今回は勘弁してあげるわ」

 3つの小さな4次元重力井戸が宙に浮いている。
 その中に、チンピラ3名が、それぞれ恐怖に慄いた表情で捕らわれているのがわかる。

 私は、その3つの井戸をそこら辺にあった空き箱に詰め込むと、しっかり蓋をしてそのまま放置した。

 まあ……あとで四次元警察に回収しに来てもらいましょう。
 誘拐の現行犯だもんね……肉体労働異世界へ島流しって感じかしら?

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