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2012年 小学生部門 最優秀賞『モーツァルトはおことわり』

受賞者
山内優莉さん(小5・埼玉県)

読んだ本
『モーツァルトはおことわり』
マイケル・モーパーゴ著、さくまゆみこ訳、岩崎書店

作品
モーツァルトはおことわりを読んで

山内 優莉

 私は三才のころからピアノを習っています。モーツァルトの曲は明るく軽かいで好きな曲ばかりです。例えば、かたくるしいバッハやむずかしいテクニックのいるリストなら、私もちょっとおことわりかなぁと思います。けれどなぜ、モーツァルトがおことわりなのだろうと不思議に思いながら読み始めました。

 ヴェニスの床屋の息子、パオロ・レヴィ。母がずっとかくしていた大切なバイオリン。パオロはそれを見た時、世界の全ての音楽がこのバイオリンの中にあり、とじこめられていて出てきたがっていると感じたのでした。けれども、とじこめられていたのは音楽だけでなく、両親をふくむユダヤ人の悪夢のような悲しいひみつだったのです。

 私はユダヤ人に会ったことがあります。二年前にニューヨークに旅行に行った時です。シルクハット、せ広、くつ全て真っ黒にそろえた男の人達。みんな同じ不思議なかみ型をした子供達。その人達だけの社会があるみたいで、私はこわくて近寄れませんでした。

「あんな風になったのには、理由があるのよ。」そう教えてくれたのは、ローレンと言う姉の友人の弁ご士さんでした。かの女もユダヤ人です。ローレンはおしゃれですてきな人です。私は同じユダヤ人でも、どうしてこんなにも、分かれているのだろうと思いました。ローレンが言っていた理由が、この本を読んで、少し分かった気がします。

 もっとくわしく知りたくて、私なりに調べたり、「ライフ・イズ・ビューティフル」と言う映画を見たりしました。

 第二次世界大戦中、ヒットラーひきいるナチスドイツは、ユダヤ人と言う理由だけで、その人達をとらえ、強制収容所に入れました。労働できない大半の人々はガス室に送られ、そこで殺されてしまいました。何百万人の人達がです。

 私は、それが大昔の信長や家康の戦国時代ではなく、たった六、七十年前のそ父母の時代だということにもおどろきました。

 パオロの両親やバンジャマンは、楽器が演そうできるという理由で生きのびることができました。しかし、想像もできないようなつらい思いをするのです。オーケストラは、汽車からおりてくる仲間のユダヤ人達にきょうふをやわらげるための道具だったのです。多くの人がそのままガス室に送られました。その時演そうしていたのが、モーツァルトの曲だったのです。

 その時かなでた音色ってどんな感じだったのだろう。

 私は発表会などで演そうする時、(どうか聴いて下さい)と心でとなえながらおじきをします。はく手をもらうと、とても気持ちが良いです。でも、イライラしていて、ピアノにあたりきつい音を出しおこられることもあります。また、大大大大好きな嵐の曲をきくと、ワクワクして、大声で歌いおどり出してしまいます。音楽は、イヤイヤする物ではなく、心から音を楽しむことだと思うのです。

 でも、パオロの両親やバンジャマンは殺されないように、つらい思いをかくして演そうをしなければならなかったのです。いくらモーツァルトの曲でも、明るい音ではなく、悲しみをごまかした音だったと思います。かれらは、楽器をぶきに戦っていたのです。

 その後、パオロの父は音楽をふういんし、母は、バイオリンを大切にかくし、バンジャマンは、音楽を続けました。

 そして、そのバイオリンは、三人をつなげパオロによってすてきな音をかなでることができたのです。父との約束で、モーツァルトだけは、ひきませんでした。

 五十才の誕生日で初めてひくモーツァルト。父達も、天国で優しい音色をきき、感動することでしょう。きっと今までとじこめられていた、悲しく苦しい記おくも、うすれていくはずだと思います。

 私もそのコンサートに行って、パオロのバイオリンを聴いてみたいです。

受賞のことば
「優莉!すっごいよ〜!」
 夜中に母に起こされました。メールを見て私もびっくり!うれしくてドキドキしました。
 次の日、姉がケーキを買ってきてくれて 家族でお祝いをしてもらいました。
 この本は、ストーリーだけでなく絵もとても美しく私はすぐに物語の世界に引き込まれていきました。
 これからも世界中のたくさんの本を読みたいです。ありがとうございました!

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