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2017年 中高生部門 最優秀賞『レッドツリー』

受賞者
古屋駿さん 中3

読んだ本
『レッドツリー』
ショーン・タン作 早見優訳 今人舎

作品
 僕は、レッドツリーを読んでみて、これまでに自分が読んだことのない形の絵本に驚きました。
 この本は、孤独で何かに悩んでいる少女が主人公で、この少女は心が折れそうになって悲観的になっている人の心の中をそのままにしながらも、易しく単純な言葉で次々と代弁していきます。
「すべてが真っ暗。」「だれも、何も分ってくれない。」「まわりはすべて、冷たい機械のよう。」
 僕がこの中で最も共感が湧いたのは、「楽しいことは、すぐに過ぎてしまう。」です。楽しいことをして現実から目を背けて、つかの間の休息を得ようとします。
 それでも、心のどこかで不安がくすぶっていてソワソワし、そして終わってしまうとそれが流れ出ると共に、空虚感が流れ込んで来る、そのような感覚を僕は何度も感じましたし、これからも何度も味わうことになるでしょう。
 しかし、そのような思いを持っていた主人公も最後は自分が待ち続けていたものは、実は自分のすぐ近くで待っていたことに気が付き、ハッピーエンドで終わります。僕はここに作者の本当に伝えたいことが込められていると思います。その思いは、絵にも表れています。
 最後のシーンで主人公は題名にもなっている赤い木を見上げているのですが、その他の全てのページの中に、赤い木の葉が一枚だけあるのです。もし赤い木が主人公の求めていた答えなら、一枚の木の葉はその答えのヒントだったのではないかと僕は考えています。
 僕はこのようなことから、この絵本の作者が伝えたいことは、何かに対する答えは、ただひたすら待って勝手にダメだとあきらめるのではなく、自分から探しに行って少しでもつかもうとすることが大切だという当たり前のことだと思います。
 僕は、自分が今できることをしっかりやっていこうと思いました。

受賞のことば
 私の作文が最優秀賞に選ばれたことに、驚いています。が、その反面、喜んでもいます。このようなコンクールで受賞したことはなかったので余計にうれしいです。
 今回読んだ「レッドツリー」は、易しい言葉で主人公の周囲に対する不満が短く書かれています。そこから、考えれば考える程色々な思いや気持ちが感じられます。
 このコンクールで貴重な経験ができました。この経験を大切にしていきたいと思います。

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※応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局

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