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2022年 小学生部門 最優秀賞『クララとお日さま』

受賞者
大北 隼矢さん(小6)

読んだ本
『クララとお日さま』 カズオ・イシグロ作 土屋政雄訳 早川書房

作品
「受験勉強の合間に」

 「期間限定の友だちは、いる?」
 そう聞かれたら、困ってしまう。
 ぼくは、友だちと長く付き合っていきたい。そもそも、友だちって死んじゃうとか別れるとかは、確定していないものだし。やっぱり、すぐにいなくなっちゃうのなんて、いやだ。
 だから、「お友だちロボット(AF)とは、大人になってから出会えたらいいのに」と思ってしまう。大人の期間は長いけれど、ティーンエイジャーの期間なんて、とても短いからだ。
 この本を読むと、『トイ・ストーリー』や『鉄腕アトム』を連想する人も多いみたいだけれど、ぼくは犬と、『ワンピース』の「ドレスローザ」という、人とおもちゃが暮らす国を連想した。そして、どこかで読んだ「友だちロボットを作れるのは、アジア人だけ」という記事を思い出した。
 すごくおもしろくて、読みだしたら止まらなくなった。たいていの小説は、夜ふかしを一回すれば読めるのだけれど、この本は分厚いので、四回くらい夜ふかしをしてしまった。
 ぼくが一番すきな登場人物は、リックだ。嫌な感じの人に、みんなの前で勇気ある行動を取ったり、最後に納屋へ連れていってくれたりして、とてもやさしい。ぼくは、やさしい人が大すきだ。
 そして、ぼくは、ハッピーエンドが大すきなので、六部からの話はなくていいと思った。(作者さん、ごめんなさい)
 どうせなら、奇跡が起きたところで、幸せいっぱいのまま、終わってほしい。
 でも、六部があるのなら、ラストは、廃品置き場で放置(それとも、スクラップされるの?)じゃなくて、家族の手で電源を切るとか、家に連れて帰った責任として、ちゃんと看取ってから、終わりにしてほしい。
 本を読んだ後に、この本に関わっていた人のインタビューを見たり、聞いたりした。
 すると、いろいろな発見があった。 
  発見一 作者のインタビュー
 作者は、本を作る時に、絵本からたくさんの影響を受けたそうだ。
 そういえば、友達に、この本を勧めた時、「なにそれ? 絵本?」と聞かれたのを思い出した。
 「ううん。四三三ページもある小説」といったら、友達は、「えぇーっ!」とびっくりしていた。
 また、作者は、「AIが感動させたり、泣かせるようになったら危険だ」といっていた。 「本当に、それは怖いことなのかな?」
 もし、そんなことができるAIが生まれたら、ぼくは、友だちになってみたいと思った。時間を限定しない友だちに。 
  発見二、ほん訳者のインタビュー
 ほん訳者は、作者からの注文で、クララだけが使う言葉、「クララ語」を考えなければならなかったそうだ。
 「シャーピ鉛筆って、クララ語だったんだ!」と、ぼくは驚いた。ぼくの知らない商品だと思っていたからだ。
 他にも、クララが何をいっているのかわからいところがあったけれど、それはすべて、ぼくの知らない日本語だと思っていた。
 ほん訳者が、「聞きなれないけど、ピンとくる言葉」を上手に作っていることに気付いた時、ぼくは感動していた。
 また、ぼくは、タイトルの「お日さま」という言葉と、「さま」のひらがながいいなと思っていたけれど、最初は漢字だったのに、その後に偶然、ひらがなになったと知り、そんなことってあるんだと、驚いた。
  発見三、装丁をした人のインタビュー
 アメリカ、イギリス版の表紙は、オレンジ色に四角のデザインで、四角の中からお日さまが少し顔を出しているものだと知った。
 ぼくは、絵本っぽくて、あたたかい雰囲気の日本版の表紙が好きだ。
 一冊の本が出来るまでに、作者やほん訳者、装丁や校えつ、出版社の編集や営業、印刷所などの、いろいろな人が関わりあって、本を作っているのだと知り、すごくすてきなことだと感じた。
 最後に、作者は、世界のほん訳者がまちがいにくいように、イギリス英語ではなく、ほん訳しやすい英語を使っているのだという。受験が終わって時間ができたら、次は、英語版も読んでみたい。

受賞のことば
 一年生の時から応募していた、大好きなコンクールの【小学生部門】で有終の美を飾れて、すごくうれしいです。
 最初は、まだ字の多い本が読めなくて、絵本の一行だけの感想文でした。毎年、読める本が少しずつ増えて、文章もだんだん長く書けるようになってきました。
 ぼくは、小さな頃から「なんで?どうして?」と考えることが大好きです。
 これからもいろんな本を読み、たくさん考えて、気付いたことを文章にしていきたいです。

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(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)

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