見出し画像

2022年 小学生部門 最優秀賞『小さなトロールと大きな洪水』

受賞者
今林 玲奈さん(小3)

読んだ本
『小さなトロールと大きな洪水』 トーベ・ヤンソン作 冨原眞弓訳 講談社

作品
「T・ヤンソンとえい遠の仲間たち」

 私は読書の本をえらぶ時、本のうら表紙やおびのせつ明を読んで決める。この本には、「ムーミン童話の記ねんすべきだい一作」と書かれていた。これまでにも、ムーミンの本は何さつか読んだことがあったが、一作目からあらためて読みたいと強く思った。
 このお話は、小さなムーミンたちが、いなくなったパパと温かい場所をもとめて深い森をさまよい、出会ったみんなとたすけ合いながら、さい後はパパを見つけムーミン谷を作り出すというハッピーエンドで終わる。
 私がこれまでに読んだムーミンの話もだいたいハッピーエンドで終わる。小せつ家でたび好きのパパ、料理がとくいでやさしいママ、みんなと遊ぶのが大好きなムーミントロールの一家の所には、いろんなお客がやってくる。お客は小さかったり大きかったり、こわがりだったり、いろんなとくちょうを持つかわった生き物で、じけんもおこるけど、ムーミン一家は何をしてもいいという風に温かくうけとめてあげる。オノマトペでいうなら、と中でドキドキ・ワクワク、さい後はポカポカ・ニッコリというのがよくあるムーミンのお話だと思う。
 この『小さなトロールと大きな洪水』を読んだ時、ワクワクしたかんじがあまりなく、さい後もポカポカというよりキラキラしたかんじがした。なぜだろう。
 うら表紙をもう一ど見ると、「だい二じ世界大せんき、トーベ・ヤンソンが安らかさをもとめて書いた」と書いてあった。この話では、ムーミンたちは長い間、森をさまよいとほうにくれている。そしてさい後のさい後にとつぜん光にてらされ、明るい場面になる。私はこの長い間のくらさと不安と苦しみはせんそうを表しているのかなと思った。反対にさい後のキラキラした明るさは終せんのよろこびと幸せを表しているのかもしれない。森をさまよっている間ムーミンはさびしくてつらかったにちがいない。でも、パパを見つけるまであきらめなかったし、洪水にもまけなかった。ついに温かい場所についた時の安心とよろこびはどれほどだろう。いたる所に目をみはるほどきれいな花がさいている。ヤンソンさんはせんそうが終わったらきっとこんなふうに温かくキラキラした世界になるにちがいないと考えてこの本を書いたのではないか。
 さい後に、もしヤンソンさんが今ムーミンのお話を書いたら、どんなお話になるだろうか。今も世界には、せんそうやコロナや地球温だん化などの問題がたくさんあってとてもこわい。ヤンソンさんは、不安な時代だからこそ、とびっきり面白くて楽しい話を書くのではないか。そうして、世界の人々に楽しさとえ顔をとどけてくれると思う。
 そして、ムーミンたちがムーミン谷に来るいろんなお客をやさしくうけとめたように、すがたや考えが自分とちがっても、みんなで仲よくするんだよと私たちにやさしく教えてくれるにちがいない。

受賞のことば
 この度は最優秀賞に選んでいただきありがとうございます。
 受賞のきっかけを作ってくれた作者のヤンソンさん、ムーミンと仲間たち、そしてこの物語を日本語になおし紹介してくれた方々に心から感謝します。
 今回私は作文を書くことで、物語を何度も読み、本の世界に入っていきました。これからムーミンを読もうと思っている方もぜひ深読みしてみてください。最初は気づかなかった作者のメッセージに気付いたり、外国の文化についても分かり、もっと楽しくなるはずです。

・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)

・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・

▼本の購入はぜひお近くの書店で。お近くに書店がない場合はお好きなオンライン書店からどうぞ。

▼『外国の本っておもしろい! 子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック』(読書探偵作文コンクール事務局編 サウザンブックス社)を発売中です。過去の受賞作、審査員の座談会、コンクールのあゆみ、読書ガイドなど盛りだくさん! ぜひお読みください。


この記事が参加している募集

読書感想文