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2021年 小学生部門 最優秀賞『ぼくのあいぼうはカモノハシ』

受賞者
棚瀬 準三さん(小4)

読んだ本
『ぼくのあいぼうはカモノハシ』 ミヒャエル・エングラー作 はたさわゆうこ訳 徳間書店

作品
「ぼくらは無二の生きものだ」

 カモノハシ(Platypus)は猫くらいの大きさをした、平らなくちばしが特徴のふしぎな生き物だ。
 ほ乳類なのに卵を産み、くちばしと水かきをもつ。くちばしは、やわらかいかと思えば、電気センサーがついていて、真っ暗な水の中でも魚をしとめてしまう。
 こともあろうに、オスの後ろ足からは毒まで出せてしまうという、まったくもって学者泣かせの生き物だ。
 人間が乱かくしたことが原因で、今では、オーストラリアにしか生息していない。
 
 「キュウウウ」
 主人公のルフスが、かなしそうにないているシドニーと出会ったのは、サッカーの練習試合の後のこと。シドニーは、人間の言葉がしゃべれる、おしゃべりでとっても変なカモノハシだ。
 「カモノハシは幸運をもたらすといわれています。ぼくがいっしょなら、わるいことは、おこりません」
 なんとあやしい、カモノハシ!
 木にのぼりたいシドニーは、ルフスにつれていってとせがむ。とっても不安そうなルフスにシドニーは、「あぶない? いやいや、ぼくがついてます。カモノハシは木のぼり名人ですよ」「そもそも、コアラに木のぼりを教えたのはカモノハシですよ」なんて、むねをはっておきながら、最終的には、木からおりれなくなり、助けてくれたおとなりのベルガーさんに、「カモノハシもわるくないが、こんど木にのぼるときは、ヤギに教わるといいぞ」なんて、いわれる始末。
 なんとたよりない、カモノハシ!
 シドニーは、「カモノハシは作戦なんて立てませんから」といいつつ、この後もどんどんへんてこな作戦を立てていく。
 例えば、「バスを手に入れましょう」とルフスにいって、いっしょにオーストラリアへ行こうとさそう。
 ぼくが持っているおもちゃそっくりのバスを見て、「よくできた仕組みですね。考えだしたのは、まちがいなく、カモノハシでしょう」といっては、鼻高々。かと思えば、大あわてで走り出し、勝手に危険な行動にでる。
 なんとおっちょこちょいな、カモノハシ!
 そうはいっても、シドニーとルフスの関係は、すごくいい。たったひとりで心細かったシドニーが、ルフスにだかれて、「いい気持ち……あったかくて、オーストラリアにいるみたいだ」と思えたことや、「ぼくが、力になれると思う?」と自信がなかったルフスが、「なれるかどうかじゃないんだ。あなたしか、いないんです!」というシドニーの言葉にハッとして、「まだ子どもだけど、きっと力になれる。いっしょに世界の果てまでだって行けるはずだ」と、勇気がわいてきたところなんか、すごくいい。
 シドニーは、カモノハシについての紹介をする時に、「ほんとうの名まえは、ちょっとちがうんです」「ほんとうは『美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの』といいます」といっていた。おっちょこちょいでたよりないシドニーだったけど、ルフスと出会ってはじめて、真のカモノハシ、「美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの」になれたんじゃないかな。
 もしかすると、だれもが、自分にぴったりのあいぼうと出会った時に、「美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの」になれるのかもしれない。
 ぼくも、ルフスとシドニーのような、『ぼくのあいぼうは〇〇』という本が書けるくらいの出会いをして、「美しさと勇気と知性あふれる、無二の生きもの」になってみたくなった。
 
受賞のことば
 今年も最優秀賞に選ばれて、びっくりしました!とてもうれしいです。この本を読んで、カモノハシの特徴を調べてみました。調べてみたら、ほにゅう類なのに卵を産んだり、毒があったり、色々面白いことがわかって、しかもそれを作文に生かせたので、よかったと思います。ぼくは生きものが大好きなので、これからも面白い生きものの本をたくさん読みたいです。ありがとうございます。

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(注:応募者の作文は原則としてそのまま掲載していますが、表記ミスと思われるものを一部修正している場合があります。――読書探偵作文コンクール事務局)

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