コヒブレ24回目:国家公務員(キャリア官僚)のお仕事Part10(法律措置、予算措置、経産省の紹介)
22回目の続きになります。
問題
第二次岸田政権のどのような政策が、大きな政府の経済政策(=財政拡張政策、統制経済)に当たるでしょうか?
答え
いくつかありますが、1つ目は半導体支援です。
1.半導体支援
まずは、日経新聞の記事を引用します。
半導体支援政策の作り方
さて、記事では、多額の補助金や政府保証を付けたい経産省と、財政規律を遵守したい財務省の違いが浮き彫りになっています。
それでは、記事には、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)や、予算など色々な言葉が出てきますが、2024年にどのようなスケジュールで、検討が進んでいくのか説明します。
さて、「骨太の方針」に半導体支援には、「法律上の措置」と書かれています。
これは、「半導体支援のような大きな政府的なばら撒き政策をする時は、しっかり法律を作ってね♪」、という財務省→経産省へのメッセージです。
それでは、なぜ、法律作成が必要なのでしょうか?
それは、日本国憲法83条によります。
国の財政(国民の税金)を使用する、それも半導体分野に大型の補助金を出すことは、「財政民主主義」による必要があります。
つまり、「国会で十分な熟議を尽くして、法律を成立させること」=「国会議員の過半数の可決」=「民主主義による決定」が求められます。
そのため、法律を作る→国会で審議する→国会で成立する→補助金を付けるという順番が必要です。
TSMCの事例
実際に、過去の事例もあります。
2022年6月に経産省はTSMCに対して4,760億円の補助金を出すを決定していますが、これは、2021年12月6日に閣議決定され、12月20日に国会で可決された「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法の一部を改正する法律」が根拠になっています。
経産省が法律を作る→2021年12月6日から国会で審議する→21年12月20日に国会で成立する→2022年6月、経産省がTSMCに対して4,760億円の補助金を付ける
というプロセスを経ています。
これで、1.半導体支援の解説を終わりにして、改めまして、
2つ目は、環境分野支援になります。
2.環境分野支援
環境分野への様々な支援策があるなかで、「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」を例示したいと思います。
これも、半導体分野と同様に、法律を作る→国会で審議する→国会で成立する→補助金を付けるという作業手順です。
「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」を作成→2023年2月10日から国会で審議→4月28日に成立→2024年2月にGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債を発行
というプロセスを経ています。
さて、そもそも、「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」とは何でしょうか?
「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債」とは?
日経新聞の記事から引用します。
初めて発行した10年物のGX債の引き受け手は、日銀が42%を占めていますが、今後、海外投資機関などが保有すれば、当初の目的を達成していると言えます。
GX債の使途は?
さて、このGX債の具体的な使途が気になります。
24年3月16日の日経新聞の以下の記載があります!
補助金は、財政規律の観点から、単年度主義です。
補助金の対象毎に、毎年、上で挙げた、以下の予算要求プロセスを繰り返さなければいけません。
今年度付いた予算が、来年度付く保証は、全くありません。
しかし、予算源が債権(bond)であれば、複数年に渡る予算確保を要求することが出来るので、複数年で予算が付くという安定的な見通しが立ちます。
長くなりましたが、
第二次岸田政権のどのような政策が、大きな政府の経済政策(=財政拡張政策、統制経済)に当たるでしょうか?
という質問に対する例として、
1.半導体支援、2.環境分野支援、を一例として挙げました。
1の財源は、国民の税金です。2の財源は、建前は海外投資機関などからの投資ですが、現状は日銀保有割合が大きいため、実質的には税金です。
というわけで、税金を原資に、特定の産業分野(半導体、環境)に補助をして、企業を強くしていく取り組みの紹介です。
このように、第二次岸田政権では、大きな政府としての経済政策を実施しています!
【8月18日:追記】
岸田政権時の主な経済政策は以下です。
気づくのは、エネルギー・環境政策の多さです。
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