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本の紹介13冊目:日本を出よ!「流出する日本人」、「日本のシン富裕層」

この記事は、
~日本で働くこと、日本に住むことに嫌気がさしている人~
~日本を出て海外移住を検討している人~
~オーストラリアで寿司を握る職人になろうとしている人~

向けです。

流出する日本人 By 大石奈々

海外在住を目指す人にとって、こんなにまとまりの良い本は、他にはありません。

群を抜いて秀逸な書籍です。
筆者(大石奈々さん)は、オーストラリアのメルボルン大学アジア研究所の准教授です。

過去23年間を海外4ヶ国で過ごした、人の国際移動の専門家です。

まず、驚いたのは、オーストラリアにおける日本人の扱いです。

オーストラリア

私は、オーストラリアに行ったことがありません。元々は囚人(犯罪者)の島、1973年に「白豪主義」を廃止し、「多文化主義」を採用した国というイメージしかありませんでした。

それ故、最近、多くの日本人が暮らしていて、良いイメージを持っていました(在留日本人数では、米国(約40万人)>中国(約10万人)に次いで3位の約10万人)

近年は円安の影響もあり、2022年10月のテレビ報道では、オーストラリアで寿司職人として働くと、日本の2倍以上の賃金が貰えると耳にしました!

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/181951?page=2

世の中そんなに甘くない@オーストラリア(豪州)

しかし、「流出する日本人」を読むと、そんなに現実は甘くないことがわかります。

甘くない現実をまとめます。

<基礎的知識>
●「ワーホリ(ワキング・ホリデー)」とは、海外の農業や工場、レストランなどで、若者が期限付の就労に従事すること。
●「ワーホリ」の主な目的は、グローバルな経験を得ることや語学力をつけることで、お金を稼ぐことは1番の目的ではない。
●オーストラリアでは、ビザの取得に5,000豪ドル(約48万円)の銀行残高証明書(自分の銀行に48万円の貯金が残っている状態)が必要で、情報収集の時間、エネルギー、渡航費、生活費も必要。


<オーストラリア(豪州)でのリアルな現実>
●ワーホリでは、1人の雇用主のもので働ける期間が最大6ヶ月
●日本人のワーホリは、大半が飲食産業、次に農業に従事している。これは、日本で農業・漁業・製造業が海外から技能実習生を受け入れている状況と酷似(=つまり、豪州での社会的弱者が日本人のワーホリという構図
●豪州の飲食産業における労働は、最低賃金が支払われていないケースが常態化している。
●豪州の法定最低銀銀は、パートタイムで23.23豪ドル(約2,200円)だが、日本人の賃金相場はかなり低い
●日本人が経営するレストランの状況は改善しているが、中国人・韓国人が経営するレストランの時給はまだ低く、最低賃金の6~7割程度で働く日本人が多い。
農業ではハイレベルな英語力は必要ないが、基本的な上司の指示を理解できなければ、すぐにクビになることがある。
●農作物の収穫の最盛期に1ヶ月50万円の給料を得たとしても、収穫が終われば無職になる。
●農業で働く日本人のSNSやネットページには、悪徳業者に騙されて賃金が払われなかった、ビザ延長のための必要書類を作成してくれなかった、という事例が多く報告されている。
●クイーンズランド州では、「ホステル」と呼ばれる安宿が人材斡旋業を兼ねていることが多く、宿を安く提供する代わりに時給から2~3ドルをピンハネするシステムが常態化している。
●欧米からの若者も最低賃金以下の時給で働かされていることがあるが、日本人を含むアジア人の時給は欧米人の時給以下のことが多い。
●2019年の日本ワーキング・ホリデー協会調査でも、日本人のワーホリは、66%が最低賃金以下、7%が無休で働いていたことが判明した。
●多くの日本人の若者は、家賃の高騰に伴う住居不足で短期滞在できる宿泊施設が少ない、英語が苦手な外国人を雇ってくれる職場も非常に少なく、雇用主に何かを言えば失職するという恐れを持っているため、黙って忍耐しているケースが多かった。
●特に豪州の農場は、若い女性へのセクハラが起こりやすく、日本人を含むアジア女性はセクハラの対象になりやすい。
●2万人近い日本人が住むメルボルン都市圏で、日本人保護を担当する領事(@在メルボルン総領事館)は、現在1名のみ。

大石奈々先生が、オーストラリアに住んで聞く現地情報を知ると、オーストラリアでワーホリをすることは、グローバルな経験を得ることや語学力を身につけることに繋がらない気がします。

ベトナムから来る技能実習生に対して、日本にいるあなたは、グローバルな経験をして欲しい、語学力を身につけて欲しいと思いますか?

答えが「NO!」であれば、ワーホリでオーストラリアに行って、グローバルな経験や語学力を得られるという発想がヤバイ(病的)ことがわかります。アジア系住民に対する差別も根強いようです(P163)

大石先生は、そのような当たり前のことを、実態に基づいて示して下さいます。

そして、「日本の未来が暗いと断定することには慎重であるべきだろう」と言っています。

私は、「オーストラリアは、好い国なのかな~」と思っていたので、その実態を知って意外でした。

やはり、1冊の本で世界の見え方が変わるものです。

この本は、海外で働くことに興味がある日本人にとって、コスパが良すぎます!!!



日本のシン富裕層 By 大森健史

2冊目は、「日本のシン富裕層」です。
野村総研の定義によれば、資産1億円以上が富裕層で、この人数が増えているようです。

「日本のシン富裕層」では、「シン富裕層」を10億~20億円の資産を持った人と定義した上で、どのように巨万の富を築いたのか、その行動様式を解説しています。

色々な類型が紹介されています。

そのなかで、海外移住するタイプは、暗号資産で、数億円から数百億円の巨額の資産を手にした人々のようです。

特徴としては、以下になります。

暗号資産が乱高下しても、一切売却することなく持ち続ける忍耐力がある。自信の判断で投資を決断できる人とメンバーのアドバイスに従う人に分かれる。地元の友人などを大切にするタイプで、本当は海外にはそれほど移住したくないと思っている人も多い。

この暗号資産タイプは、実は海外への移住願望があるわけではないのですが、彼らが海外に移住するのはなぜでしょうか???


海外に移住する暗号資産タイプ

移住先としては、ドバイが人気のようですが、その理由は以下です。

ドバイは、先進国に多い「全世界所得課税」という居住者に対して自国を含めたどの国で得た所得にも課税対象とする制度がなく所得税以外にも譲渡益税、法人税や贈与税、相続税もないからです。

最近は節税や投資家、最近流行のFIREを考えるシン富裕層に、ドバイは大変人気があります。

また日本では、暗号資産が税制面で著しく不利になっています。株式や債券、FXなどで得た利益は、給与収入から切り離し約20%の税率が適用される「申告分離課税」ですが、一方の暗号資産は、雑所得として利益が計算され、給与収入などと合算する「総合課税」方式のため、所得税と住民税の税率がそのまま適用されてしまうと、最大で55%の税金を支払う必要があるからです。

ドバイに移住し、日本の非居住者となってから暗号資産を売ると、売却益に税金はかかりません。それもあって、最近はドバイへの移住が人気です。

しかし日本も、累進課税ですから、元々の年収が低く、暗号資産を少し売るだけなら、それほど税金を取られるわけではありません。しかも暗号資産は雑所得扱いですから、利益が20万円以下になるように売れば、税金はかからないわけです。

ドバイ以外にも、シン富裕層の主な海外移住先として、13ヶ国についての一言解説があります。

【アメリカ合衆国】
 投資先さえ見つかれば申請は比較的容易で早く住める。飲食業が多いが不動産管理ビジネスが最近のブーム。居住義務が明確でないので、母子のみハワイ移住で夫は日本で仕事というハワイ好きが増加中。永住希望の場合、アメリカ滞在中に永住権(EB-5)を追加申請可能。投資先の選定、申請の準備が面倒であるが、家族全員がグリーンカードを取得できるメリットは大。

【ポルトガル共和国】
 世界でも人気のビザ。投資・滞在条件が比較的簡易で永住権、市民権まで取得可能な点が魅力。ヨーロッパへの足がかりに。

【オーストラリア】
 住・教育環境が優れ、相続税がない点も大人気。

【ニュージーランド】
 住・教育環境が優れ、相続税がなく、永住権取得後の滞在義務がない点が日本を離れづらい経営者に大人気。世界でも数少ない維持しやすい永住権。

【シンガポール】
 5年程前(2017年)まで人気だったが、ビザ取得・更新の難易度が上がり、魅力減。GIPと呼ばれる投資家ビザは投資条件以外の難易度が高すぎる。申請できる人がほとんど存在しない永住権。

【カナダ】
 2019年から中断中で再開の目処たたず。留学後の永住は比較的簡易。

【ドバイ首長国(UAE)】
 現時点で1番人気の投資ビザ。住・教育・投資環境が整っていて、投資コストも安い。11月~3月くらいは快適だが、6~9月は酷署。車移動で外を出歩くことはないと割り切れば最高。真夏はヨーロッパで避暑という人も多い。

【スペイン王国】
 不動産投資でビザが申請できるゴールデンビザが人気。個人だけでなく、法人名義で購入してもビザ取得可能というメリット大。
(桐島の注)現在、ポルトガル、ギリシャ、アイルランドは、ゴールデンビザを廃止しているか見直している。スペインは、廃止を決定している。

【マルタ共和国】
 申請費用が高額で約14万ユーロ以上かかる点が厳しい。投資が必須ではなく、滞在義務もほとんどないためグロスの投資額を抑えたい方にお勧め。

【アイルランド共和国】
 EUでは数少ない英語が主要言語の国。

【フィリピン】
 コストがすべてにおいて安いが、申請時に一定の居住が必要な点に問題がなく、住環境が合えば。

【タイ王国】
 ポストマレーシアの最右翼。ビザ取得に必要な費用をアップさせる傾向が気になる。早めに取得が吉か。

私は、国家公務員ですので、億り人や富裕層というのは、夢のまた夢ですが、このような世界があることが勉強になりました!!!

最近、円安のため海外でのワーキングホリデーを目指す人が増えています。

同時に2013年以降の円安や株高や暗号通貨高に乗って、資産家(シン富裕層)になった方も税金対策で海外を目指します。

2極化する海外志向に驚きました( ・∇・)

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