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劣等感(コンプレックス)の超克 Part6(霞ヶ関での武者修行)
前回の続きです。
省内の人事を巡るバトルであるGreat Gameの話です。
民間企業の会社員も、入社してから10年ぐらいすると、人事管理をしなければいけません。
入社してから数年間は、自分のことだけ考えて、自分の仕事をしていれば良いですが、管理職に近づくと、自分の所属する課に所属する人たちの人事管理(マネジメント)をしなければいけません。これが本当に、本当に大変です。
省内の人事を巡るバトル
私の所属する省庁では、はやくも8年目の総括補佐(=中間管理職)の時に、課員の人事権の一部を担うことになりました。
人事権は、一義的には課長の権限ですが、課長と一緒に方針を考えて、人事部局との調整をすることになります。
男性管理職Aの置き土産
弱小管理職Aは、以下の受け入れを決断してしまいました。
人事担当課:
「Aさん、次はあなたの課に、外部出向中のXさんを配置しますね。Xさんは、長らく外にいたので、国際業務の慣れるまで時間がかかるかと思いますが、慣れたら役に立つと思うので、是非ともよろしくお願いします!」
管理職A:
「わかりました。それは心強いです。受け入れたいと思います!」
霞が関では、1~2年という短い人事異動ローテーションが起こります。
そのため、異動が決まっていた管理職Aは、新しい課員の受け入れに関して、大きな興味を示さなかったのです。
管理職Aが典型的な人が良く、判断能力がないと知っていた人事担当課が、押し付けてきた新しい課員Xは、なんと、精神状態が通常ではなく日常教務がこなせないレベルのメンタルだったのです。
着任当初は、おとなしい方だと思っていて、通常業務のキャッチアップをお願いしていましたが、徐々にキャッチアップが著しく遅く、日中の雰囲気も周りの人とのコミュニケーションに不慣れである様子が伝わってきました。
それに気づいた、男性管理職Aの後任の女性管理職Bは、早速行動に乗り出しました。
まず、Bは、人事担当課の担当者に電話をしました。
そして驚くべき実態がわかりました、、、
課員Xは、外部出向中に鬱病に近い精神状態であったため、しばらく休暇を取っていて、徐々に回復してきたことから、我が省(本省)に復帰が決まったということでした。
この情報を、女性管理職Bは、男性管理職Aから何も引き継いでいなかったため、BはAに対して激怒しました( ;∀;)
そして、次に、BはAに間髪入れず電話をしました。
そうしたところ、Aもそのような話は、人事担当課から聞いていなかったとのことでした。
判明したことは、人事担当課が、人柄の良いAに対して、事実を隠してメンタル職員Xを押し付けてきたことでした。
この一連の流れを横で聞いていた私は、恐怖を感じました。
人事を巡る弱肉強食の食うか食われるかの戦いというのは、権謀術数を駆使して騙すか騙されるかの戦いだったということです。
「我が省の人事を巡る戦い!、まじコエー(怖い)」と思いました。
女性管理職Bの巻き返し
そしてその後の、女性管理職Bの巻き返しも迅速でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1718120228087-GFBbD3IWHz.png?width=800)
情報収集を終えたBは、再度、人事担当課に電話をして、相手の非をロジカルに攻めに攻めまくりました。
そして、できる限りはやく課員Xを、業務が簡単な他の課に異動させることを約束させようとしました。
女性管理職Bは、課員のメンバーシップの重要性というものを肌身に感じていました。「1つのリンゴが腐っていると、他のリンゴも腐ってしまう」のが、職場での人間関係の本質です。
腐ったリンゴを素早く除去するために、数時間もの間に、一気呵成に物事を進めてしまう、Bに要領の良さと頭の良さを感じました。
さすが、都内の最高偏差値を誇る女性中高一貫校→東大法学部現役合格→役所の実力です。
勉強時間をかけるタイプではなく、何事も短時間でこなしてしまう、超秀才タイプでした。
結果として、課員Xは、着任してから3か月程で他の課に異動することが決まりました。異動前も、職場に出勤できないことが多く、リハビリという感じでした。
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課員X(メンタル)の後任の登場
さて、小さい課にとっては、リソース不足(マンパワー不足)は生死を分けます。
女性管理職Bは、課員Xの後任には、普通に仕事ができる人を欲していました。何度も、人事担当課に掛け合いました。
そして、ついに女性が来たと思ったら、この方もまたもやメンタルでした。
この方は、学歴だけで見るとめちゃめちゃ優秀な方でした。
女性課員Yの学歴は、東大法学部→入省→ハーバード・ロースクールに留学というものでした。
しかし、どう見ても、ガリベンで、勉強時間の多さだけで高学歴を手にした感じの方でした。
何よりも、内向きで、コミュニケーションに躁鬱感がある感じでした。
そして、それは正解でした。
彼女は、キャリア採用でしたが、私より下のポジションの配属されました。
そのため、私は、女性管理職Bと相談して、彼女への一切の指示は、Bから行うというルールを作って貰いました。
「仕事のストレスの9割は人間関係」と言われますが、我が事になると現実味を帯びてきます。
自分の課にどのような部下が欲しいのか?!
日本企業や官庁で、総合職で働いている方は、入社して10年ぐらいすると中間管理職としての仕事が押し寄せます。その際に、どのような部下・社員を自分の部署や課に入れるべきか、ヒントになる記述を引用します。
![](https://assets.st-note.com/img/1718120961296-YNK1utcnSe.jpg)
第10訓 問題のある人物は、けっして自分のスタッフに入れない
かけ算の仕事で「ゼロ」は致命的
仕事が高度になればなるほど、スタッフの能力のかけ算で成果が決まります。能力が1の人間2人が一緒に仕事をして「1×1=1」にすぎません。しかし能力が2の2人が一緒に仕事をすると、成果は「2×2=4」になります。
逆に能力がゼロ、あるいはマイナスの人がいたらどうでしょう。周りにどんなに優秀な人間が集まっても、その積はゼロかマイナスになってしまいます。
たとえば雑誌をつくる編集部で、4人のうち3人が非常に優秀な編集者で素晴らしいページをつくった。ところが1人の能力がない編集者が原稿チェックを怠り、事実と異なる記載によって回収騒ぎになってしまった。
どんなにほかの記事の出来がよくても、1つの記事のミスですべて台無しになるのです。そうすると売上げどころかマイナスが会社全体に降りかかります。
組織をマネジメントする人間にとって、最も避けなければならないのは能力がゼロ、あるいはマイナスの問題社員を部下として抱えることです。
私が上司からそのような人物を押しつけられそうになったときは、とにかくあらゆる理由をつけて断りました。特にインテリジェンスの仕事では、1人のミスが致命的な結果を引き起こしかねません。組織どころか国益まで損ねます。
情け心を出して「自分が何とかしてやろう」などどは間違っても考えないこと。自分だけでなく部署全体、最悪の場合は会社全体に不利益が及ぶ危険があります。
中間管理職は、自分の部署がいかに不利益を被らないか、いかに利益を上げるかを最優先で考えるべきで、問題社員の再生は会社があなたに期待している仕事ではありません。それは上の役職や人事部が考えることなのです。
この記述は、中間管理職の仕事内容を完璧に言い表しています。
中間管理職になると、人事面で嫌な人材を自分の部署に押しつけられることを防ぐ、鉄壁の防御力が求められます。
うちの省庁で出世する人は、自分の部署に優秀な人材を配置できる人です。
社会人8年目ともなると、自分の所属している部署の人事、人材のことも考えなければいけないのは、非常に良い勉強になりました。
長くなりましたので、人事を巡る攻防の続きは次回にて!
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