見出し画像

【書評/音声コンテンツstand.fm】子育て×読書 第6回 第7回 イノベーション・オブ・ライフ クレイトン・M・クリステンセン著

みなさま、如何お過ごしでしょうか?

あっという間に7月も終わりに近づき、8月も目前ですが・・・この時期、寒暖の差が激しいですし、コロナウィルスの状況もまだまだ予断を許さない状況ですので、引き続き体調管理にお気をつけ頂ければと思います。

本題に入っていきますが•••

ハーバード・ビジネススクールの卒業生に向けた最終講義という事ですが、経営のセオリーを人生に当てはめて考察しクリステンセン教授の理論として落とし込まれているのが、非常に秀逸です。

また原題には・・・「How Will You Measure Your Life?」と書いてあります。この英語の題を見た時に・・・自分はどの様な尺度で人生と向き合っているのか?と改めて自問自答致しました。

stand.fmでは第6回、第7回の2連続で収録致しました。

クレイトン・M・クリステンセン教授のイノベーション・オブ・ライフをお届け致します。

◯クレイトン・M・クリステンセン教授とは

ベストセラーとなった「イノベーションのジレンマ」や「イノベーションのDNA」「ジョブ理論」「繁栄のパラドクス」など数々の名著を世に残した偉大な学者ですが、身長は2.3mもあり、バスケットの経験があったそうです。表情からの温厚な性格がうかがい知る事ができますね。また敬虔なモルモン教徒でもあり、書籍の中にもその様なある種の宗教観を読み取る事が出来ます。

BCG時代には休日は仕事はせず、家族との時間を大切に過ごしていたことが書かれており、後に振り返ると家族との時間を最優先していたことが、不幸を回避出来たとも考えていたようです。自分にとっての最も大切だと思う尺度を持っていたという事なのだと思います。

◯経営のセオリーを人生に活かす

経営のセオリーは人生に活かせるという発想をこの書籍から学ぶ事ができます。日々、仕事に忙殺されてしまうと、本当に自身が価値を見出している大切なことまで疎かになりがちですよね。

例えば、家族との時間を大切にしたいと考えていても、仕事という人生において非常に容量を喰われる大切なタスクもある訳ですし、バランスを取ることが大切ですが、仕事に忙殺されることで、家族を蔑ろにしてしまい、結果家庭を崩壊させてしまったり・・・離婚するなどの悲劇も耳に致します。

また自身が心身を悪くして長期欠場や自殺なんて事もあり得る訳ですが、このクリステンセン教授の優秀なハーバードの同級生たちも、同窓会で会う度にひとり、またひとりと不幸になっていく友人がいると語られております。

◯人生の根源的な問題への早期の解決方法は無し

いきなりきつい一言ですが、人生の根源的=本質的な問題への早期の解決方法はない・・・そんなにさくっと解決できる方法はないとクリステンセン教授が苦言を呈しているわけです。

我々、日々忙しく?過ごしており、即物的解決しないとある種、気がすまない様な麻痺状態に陥っている様な気も致します。確かに、ビジネスでもそうですが、ノンバイナリーな問は実務家レヴェルではあまり出てこない(これはリーダーや担当者の問いの立て方の甘さでもあります)ですが、バイナリーにサイエンス的に解を導こうとしているし、論理的思考を回すように自分自身を追い込んでいる向きもありますよね。

しかし・・・実はこの即物的に判断を求められる態度こそ、オールドタイプの思考様式と断じる他ないというのが現状到達している私の誤読でもあります。正解を導く事にどれだけの意味があるのか?という事をもう一度考えてみたいと思います。

この意味という概念は私のstand.fmの数十の音声コンテンツでも毎回考える概念でもありますが、我々はマルクス・ガブリエルの言う所の意味の場で生きている訳ですね。意味が問いであり場が答えというこの関係性は良く理解しておいた方が良いと思います。適切な問いを立てられる人がこのVUCA時代を生き抜いて行くと日々感じておりますし、適切な問いが立てられれば、大きく外れるよう答えが出ることもないと思っています。

この答えについても一言補足するのであれば、他者が出せない洞察を出すことが今後一層求められることは間違いなさそうです。同じ様な答えを出すことを我々、幼少期の教育で叩き込まれて来た訳ですが、いよいよこのパラダイムをアップデートしないと立ち行かなくなってきたという事です。

はい。だいぶ横道に外れてしまいましたが・・・クリステンセン教授は人生には理論が必要だと言っていますね。理論には意見があると。これは何を意味しているのでしょうか??
優れた理論には「気が変わる」ということがない。
書籍の中で重要な示唆が書かれております。インテルのアンディ・グローブの半導体市場でのエピソードと統合参謀本部でのエピソードが文脈こそ違うものの、本質の部分で繋がりがあったという話。

これは書籍を読んでいる時に良く、ひらめくことでもありますが、歴史の書籍を読んでいる時に、ふと、経営の課題や自身のビジネス上の課題を解決出来そうなヒントを発見する瞬間があります。連関性を感じるわけです。

◯情報を多く集めることの妄信性

私も分析のお作法は一通り心得ているつもりですが、データを集める事である種、安心している自分に気づくこともあります。データがたくさん集めっても本質に到達出来なければ、あまり意味を持たない側面もありますが。

しかし、データは過去の事を示すに過ぎず、未来を予見するには仮説を立てて分析と検証を繰り返すというフェーズがあるわけです。情報がたくさんあれば良いという訳でもないですし、ケースバイケースですね。

◯理論を人生に役立てるには?

ポイントは「何が、何を引き起こすのか?」という問いに向き合うことです。データは確かに過去の事を語ってくれますが、必ずしも因果関係があると結論付けるのは時期尚早である場合もあります。データを見て直ぐに分析に入ることは私も極力止めています。

データの分析をする前にすべきこと・・・それは・・・そもそもの部分を固めておく。これを仮説とか言ったりしますが、人生においてもこの仮説をいくつか持っておくことで後々、結果をどう結論にブリジッジングさせるかは結構大きな問題になることがあると思っております。結論まで落とし込めば実行すべきアクションプラン選定へと入っていくわけです。

分析のお作法まで、人生に課題に向き合う時に使うことが出来るわけですね。ピーター・ドラッガーは仕事には論理があり、働くことには力学があると語っています。仕事に限らず自身の理論を構築しておくことは先行き不透明なVUCA時代の必須のリテラシーとなりつつあると思います。

◯ハーズバーグの二要因理論とは?

動機づけ理論(別名はモチベーション理論)とも言われている理論についてイノベーション・オブ・ライフでも書かれています。この理論はアメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグがハーバード・ビジネス・レビューに論文を発表して有名になりましたが、人間が動くのにはどんなメカニズムがあるのかを紐解いた非常に腹落ちする理論です。

ハーズバーグの二要因理論は、人事労務管理に必要な要素を「動機付け要因」「衛生要因」の2種類に分けて説明をしています。

動機付け要因:達成することや、承認されること、仕事そのものや、昇進・向上といった、仕事の満足度に関わる内容です。別名、促進要因とも呼ばれ、あれば仕事の促進剤になるもの。

衛生要因:報酬、名声、権威といった、仕事の不満に関わる要素です。別名、不満足要因と呼ばれ、整理されていないと不満を感じるもの。

キャリアで悩まれている方、キャリアトランジションのタイミングにいらっしゃる方もこの理論は知っておいた方が良さそうです。自分が何に!駆動されて行動を起こすタイプなのか?を知っておくことで、その後のポジションの取り方も変わって来ると思います。

そもそも自分を動かす原動力が何なのか?自分のスタンスやテーマは何なのか?を良く自身で深堀りをしておく必要があると改めて感じます。

個人的には衛生要因はたしかに仕事に対して不満に思うことを一時的に解消をしてくれると思います。ただ・・・持続的ではないと思っております。

一方で動機付けは真の意味で自分を駆動させる為の原動力でもあるので本来は動機付け要因を良く理解してリーダーはフォロワーと接する方が宜しいかと思います。また子育てにおいても、子供も同じ一人の人間ですし、ありのままの一人の人間として動機や意味を与えられる親でありたいと誤読を致しました。

◯自分の愛する仕事を選ぶには?

愛することはアートであるとは、エーリッヒ・フロムの言葉であり、選択はアートであるとはシーナ・アイエンガーの言葉でもあります。愛するということは技術であり習得可能ですが、愛すべき仕事を選択するにはどうしたら良いのでしょうか?

そもそも最初から仕事を愛することは可能なものなのか?仕事で様々な経験をする中で自分に何となくフェットしてくる感じなのか?

我々は衛生要因に引っ張られてキャリアを選択してしまうこともあると思いますが、本来考えるべきは動機付けの部分だと改めて感じます。

これは孔子も言ってますが・・・「汝の愛するものを仕事に選べ、そうすれば生涯一日たりとも働かなくて済むであろう」と約2,500年前に言っている訳ですね。仕事を通して世界と繋がれる訳ですし、世界に貢献が出来ますね。仕事は人間にとってとても重要なものだと感じます。

人間の自己肯定感や幸福感、自己受容感あたりも仕事と密接に関わってくるでしょうし、仕事を選択する事は芸術作品を仕上げるつもりで丁寧に見極めていく必要がありそうですよね。

◯人生の戦略とは?

経営と同様に人生も戦略的に帆を進めることでより具体的に未来を構想する事ができると思います。

クリステンセン教授は戦略には「意図的戦略」「創発的戦略」があると言っています。何となく腹落ちするような内容ですよね。既に自分の進むべき進行方向が何となく理解し帆を進めて舵を切っているようであれば「意図的戦略」を取るべしということですね。

ただ、一方でみんながみんな進むべき帆の進め方が分かったという事はなく、考えながら進めているのだとすれば「創発的戦略」を取った方が効率が良いということになります。

余談ですが・・・地図とコンパスのメタファー

画像1

不透明で不確実性の高いVUCAと呼ばれている時代ですが・・・今まで使っていた地図はだいぶ読みにくくなってきています。今まであったはずの道は通行止めになり、或いは新しい道が出来ていたりと・・・

これからのリーダーには地図ではなくコンパスの針の指し示す方向を的確に捉える知的体力やセンスが必要になってくるとも言えると思います。その為には即物的な知見ではなく、数千年の風雪に耐えてきた様な学問を学んで見ることも必須のリテラシーになりつつありますね。

◯ジョブ理論とは?

ジョブ理論という書籍は別でクリステンセン教授がかきあげていますが、このイノベーション・オブ・ライフでも軽く触れられております。たしか・・・お子さんが急に仕事の都合で引っ越しをすることになり・・・真っ先にイメージしたのがIKEAだったというエピソードだったと記憶しております。

みなさんIKEAはご存知ですよね?広大な敷地にテーブル、椅子、雑貨、照明、寝具などがあり楽しい買い物体験をすることができますよね。余談ですが・・・IKEAに買い物に行った事がある方なら想像出来ると思いますが、ショールム的な家具がスタイリングされたゾーンと大きな倉庫の様に商品が積まれているゾーンのちょうど中間地点にレストランがあることをご存知でしょうか?

中間地点というところがポイントです。我々は日々、大小様々な意思決定の連続の中で生活をしておりますが、意思決定疲れという言葉をご存知でしょうか?そのままずばり、我々は段々と疲れて行くわけです。。。

その意志決定の疲れを解消してくれるようにちょうど、中間付近にレストランを配置しているIKEAは消費者インサイトを深く理解しており、店舗設計にまでデザインされているという事に同じ様な企業が過去数十年出てきていない事を物語る一つのエピソードではないでしょうか?

このエピソードからも分かる通り、片付けるべきジョブ/用事(引っ越し/直ぐに家具が欲しい)を良く理解しているIKEAは素晴らしいと思います。
顧客はこのジョブを片付ける為にプロダクトを雇用する(家具を購入する)ということです。消費者のインサイトを熟知しているからこそ世界中で支持されている訳ですね。大変腹落ちをしてしまいました。

このジョブというものの定義は・・・特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩という事になると思います。レビットのドリルの穴の話ではありませんが、顧客はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しい=穴を空けることで成し遂げたい進歩がそこにある・・・という顧客インサイトをそこまで想像できているか!?がポイントなのだと思います。

◯自画像、献身、尺度とは?**

このフレームは強烈です。先日、Schooさんのプロフェッショナルの読書術に登壇した際もこのフレームを読書術に当てはめて考えていきました。

【プロフェッショナルの読書術】
ご興味ある方は動画アップされてますので、是非、ご視聴下さい。

はい。この自画像、献身、尺度というフレームはビジネスだけではなく人生や読書術にまで当てはめることが出来る、極めて汎用性の高いフレームだと思っております。

①自分の在るべき姿(世界観)を描く=自画像
この自分がこう在りたい、あるべき理想像、イデアの様な話ですが、その世界観と現状の状況や置かれている文脈とのギャップを出すことで、具体的なアクションプランへと落とし込めると思っております。

これはやや抽象度の高い問から具体へと落と仕込む、具体と抽象の運動であり、この往復運動を何度も繰り返す事で思考の体力が鍛えられるという側面もあります。

②描いた自画像にコミットする=献身
この献身は誰に対してのものでしょうか?実は、描いた自画像に対してコミットすることを意味しております。非常に苦しい選択を自らする訳ですが、自分で書いた自画像との距離感を掴むことで具体的に帆を進ませる方向も決まりますし、何より意味付け、動機付けが自身の中に発生するので・・・これはもうある種、フロー状態、ゾーンとも言えるわけです。狂信し突き進むイメージですね。

③自身を評価する=尺度または判断軸
そして・・・自身を評価する事が極めて重要だと感じます。これは尺度と言われておりますが、個人的には判断軸と置き換えて考えたりもしています。

しかし、評価するにもそれなりに判断する材料も必要ですよね。この自分自身のおりじなるの「ものさし」を手に入れる為にも我々は人生の勉強を続けないといけませんね。特に体幹を鍛えられるような骨太の知識や経験が必要になってくると感じます。

◯動機や意味について**

最後に・・・ドストエフスキーも言っておりますが、無意味で無益な労働ほど、人間を破壊するものはないと・・・ばけつからばけつに水を移すという意味を見出せないような作業を繰り返しさせられた人間が精神を病むことになると思います。そこには自分自身に対して意味付けが出来ないからだと思います。

またマルクス・ガブリエルも問が意味である場が答えであるとも言っています。意味の場という概念ですが、我々は意味や動機がないと結局、持続的に動いて行くことが出来ないんだと感じます。

より生産的で効率的に仕事をすることも大切ですが、一方で意味を見出したり、意味づけしたり、時にはリーダーがフォロワーに適切な問の設定やアジェンダの設定をするなどのリーダーシップを発揮することが、アフターコロナに入った今こそ改めて問い直す必要がすと感じております。

長々となりましたが・・・読んで頂きありがとうございました。

#クレイトン・クリステンセン #イノベーション・オブ・ライフ #イノベーション #リベラル・アーツ #マルクス・ガブリエル #Schoo #プロフェッショナルの読書術 #Standfm #子育て ×読書体験








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?