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本を読んで「幸せは自分の外側にこそありそうだ」と考えた(2019年1月)

今月、本を読んで考えたのは「自分の理想とか、成長とか努力とか、そういうものを手放してみると案外幸せなのかもしれない」ということでした。

チョン・セランさんの「フィフティ・ピープル」という小説がユニークでした。本作は主人公がなんと51人がいて、各員分の短編が収められています。面白いのは、それぞれの主人公が別の主人公の物語の「脇役」として登場することです。


たとえば、食中毒で入院した男性が、近くの建物の屋上に佇む女性に手を振るシーンがあります。女性のパートでは、ぼーっと人生を考えていたら、病室から手を振られるという風に視点が変わる。何気ないシーンですが、「手を振る」という小さなアクションでも誰かの人生の彩りになるんだなあと感じて、ちょっとほっこりします。

この「自分という存在は他人の人生にとって彩りになる」という話が、社会学者・菅野仁さんの「愛の本」で書かれている「本当の自分より、自分にとっての〈ほんとう〉を探そう」という話につながる気がしました。

本当の自分とは、「ここ」「いま」ではないどこかにいる理想の自分。そうじゃなくて「ここ」「いま」の自分が、何となくでも自分らしいと感じられる「生のあじわい」を探してみよう、というのが菅野さんのメッセージ。つまり、自分の「内側」にばかり突き進んで自分を探求するんじゃなくて、とりあえず自分の「外側」にアクションをかけてみて、それをどう感じるか試してみようよと。そこに「自分」があるんじゃないのかい、という話です。

外側に向かっていくことで「他者」に出会う。その他者に、少しでもポジティブなものを与えられるとすれば、それこそが幸せなんじゃないだろうか。「脇役」でいられることに喜びを覚えた時、そこに「生のあじわい」を感じられる自分というのは、とても優しく穏やかで、素敵な人物でいられるような気がします。自分にも前向きな照り返しがあるというか。そういう意味で、幸せは自分の外側にこそありそうだな、と考えました。

今月はほかに「羊飼いの暮らし」と「ファクトフルネス」の感想を書きました。どちらも学びの深い本でした。

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はてなブログで読書感想を書いて3年目。でも、noteもすごく素敵なサービスだし、何か書いてみたい。というわけで、「今月本を読んで考えたこと」というメタな話をエントリーしてみました。なるべく来月以降もやりたいです。

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