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女は馬鹿で可愛くなくちゃだめ?

理不尽だから神に縋ったはずが、神を信じるかぎり、いつまでも理不尽の奴隷だよ。思考することを放棄した葦が、神の子の正体じゃないの?

信じる、信じない。

神様がいる、いないの議論を超えて信じる、信じない、の難しさに主人公の比紗也は苦しんでいる。特に男という生き物に、翻弄されて生きてきた過去を持つ彼女は、男と女の関係に根本的に絶望していた。

女は馬鹿で可愛くなくちゃだめなんだ。賢くなるなよ。本当の感情もだしなさんな。重たい女も賢い女も鬱陶しいだけなんだよ。

こんなことを父親から言われて育てば、絶望するのも無理はない気がする。
そして私自身、この文に引っかかってしまった。何となく昔に感じていたことをはっきりと文字にした言葉だった。

学生時代、私は一時期どうしようなく気分が塞いでしまっていたときがあった。そしてなぜかその時期だけ、男性から声をかけられるようになった。

喋らなくなって、人の話に相槌だけ打つようになって、適当なタイミングで笑って何ともないふりをしている私は、なぜか男の人にはウケが良かったようだった。私はそんな彼らと飲みにいっては話を聞き、相槌を打ちながら、もし今私が悩んでいることや、気分が塞いでしまってどうしようもないことを話したら、一体彼らはどう反応するんだろうかと考えてばかりいた。だけど、実際私は自分の話をすることは一切なかった。きっと根本的に、男性は重い女や小難しい話をする女が嫌いなんだと考えていたんだと思う。そして、相手にどう思われるかよりも、理解されたい、そして相手のことを理解したいという欲求が足りなかった。

悪い人ではないし、話していればそれなりに楽しい。ただ軽いのだ。そんなレバーパテなんかよりもずっと、絶望的に。

主人公比紗也もそんな男と女の関係に絶望している。だけど、そんな彼女も探すのをやめられない。相手から好意を向けられ、性的に求められればられるほど、望んでいる“あれ”が手に入ると期待してしまう。

この小説のラスト、比紗也が手を差し伸べたものはきっと男と女の関係に苦しむ私たちの希望の足しになる。
そう思える一冊です。

Written by あかり
アラサー女


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