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綺麗だねとか可愛いとか、じゃあ埋まらない何か

「君の体が、君の体だけが綺麗で好きだ、と誰かに言って欲しかっただけかもしれないです。でも結局、女性がセックスに求めていることってそういうことじゃないかって思うんです。」


「でもそういうことが分かるとか、分からないとかは、大して愛情とは関係ないことだとも思いますよ」


毎晩食卓を一緒に囲む親友みたいな旦那がいる。何でも話せるし話が尽きない。それなのに、何かが足りなくて、旦那以外の男性と逢瀬を重ねる千尋。

何かが足りない。
私たちをこの感情に苦しむ。時に誰かと一緒に生きていたり、一見孤独ではない時には更に。

私は“誰かから自分のことを深く理解されたい”という欲望が、人間が持つ最も厄介なものなんじゃないかなと思う。理解されたくて、されたくて、だけど理解されない。それだったら分かりやすい賞賛、例えば美しい、とか綺麗だとか、はたまたあなたの身体が好きだとか、そういうものだけでもあれば少しは満たされるんじゃないかと思う。
そして、身体でつながった後に気付くのだ、ちっとも満たされていない、と。

こんなに好きな人とセックスなんてしたら、地球が真っ二つに割れるくらいじゃないと到底取れないんじゃないか。採算とか、バランスとか、代償とか、そういうのぜんぶが。

好きな人と一緒にいるだけで、いろんなもの全部がどうでも良くなって、幸せで、足りないものなんてない。

そういう気持ちがずっと永遠に続けばいいけれど、そうはいかないのが私たち。大好きで、大好きで、初めて会った時から大好きだった彼と別れを決めたのは、瞳さん自身だった。

昔は恋愛映画やドラマを観て、相手のことが好きなのに別れたり離れたりすると、無性に苛立った。
好きなら何で一緒にいないの? 
子供の私はふくれっ面で眺めていた。

今なら何となくわかる。瞳さんがお別れした理由が。

瞳さんが彼にお別れする時に渡した封筒に書いてあった短歌が忘れられない。
あなたにもこの短歌に出会ってほしいな。


Written by あかり

アラサー女


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