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悟りに至る7つのステップ④

今回お話ししたいことは仏教の修行の本質に関わる大事な話です。このお話さえ理解していただけたら、この一連の記事は成功したといっても良いともいます。それくらい重要な話です。

ステップ 2.5 「私」のない純粋な視点を目指す

前回心の清浄の段階における修行者の矛盾についてお話ししました。短くまとめるとそれは「集中すればするほど心は落ち着き統一されるが同時に五感なども鋭敏になり簡単にその集中状態が崩れてしまう」ということです。これを乗り越えられないと仏教の修行は続けられません。実際このようなところのつまづいて人里離れた静かな場所で過ごす、という選択をとる人もいると思います。いわゆる「サマーディ(三昧)」を目標とした教えを受けた人はこのような道に進むしかありません。しかし仏教は違います。そこを乗り越える方法があるのです。この方法を提示しているのは恐らく仏教だけです。他の宗教や神秘思想にもその状態を説明するものはありますが、実際にそのような状態を獲得する方法論がないのです。
ただ仏教においてもなぜそのようなことが可能になるのか明確に説明している文章に出会ったことがありません。私が自分の体験について語る必要があると思ったのはこれについて自分なりに丁寧に言語化する必要を感じたからです。

集中力があっても注意力が足りない状態

なぜ集中状態が作れてもうまくいかないのか。
結論から言うとそれは注意の力が足りないからです。
集中力がいくら増しても刺激に対する反応に動揺してしまっては保持している意識の均衡が崩れてしまいます。しかしこの刺激と反応自体は問題ではありません。問題はそういった反応に認識する意識(=注意)が巻き込まれてしまうことです。

意識の「前」に潜り込む

では巻き込まれないようにするにはどうすれば良いか。
それは注意の力を高めることによって巻き込まれる(=刺激に対する反応が「私」の意識に統合される)「前」を認識できるようにすれば良いのです。それはあたかも通常の意識以前の無意識の領域に意識が潜り込むような感じです。これは意識的に認識できる領域を拡大しているとも言えます。
では具体的にどのようにすればその「前」を認識できるようになるか。これが実はやることは変わりません。感覚に注意を向けていくのですが、より集中しより正確に、外からの刺激の入力に対して即座に注意を向けるというだけです。それによって徐々に注意が向けられる範囲が拡張していきます。時間的にいうと、より早くから感覚を感じられるようになっていきます。そしてそれが一定以上進むと「私」に反応が統合される前の感覚を感じられるようになります。

これはちょっと経験的に分かりづらいですね。なのでサンプルとして私が実際に経験した例を出します。

認識が早くなる例① 痒みを感じる前の手の動き
ある時、私は座った状態で呼吸の際に上下するお腹周りの筋肉の感覚に注意していました。その時こめかみあたりに痒みが出てきました。基本的にこういった痒みは無視しますが、その時の痒みはかなり強かったのです。すると奇妙なことに気づきました。私が「痒い」と気づく前に腕が動く感覚を認識したのです。普通人は痒みを認識した結果痒い場所をかいていると思っています。しかし痒みというのはかなり原始的な感覚で反射に近い形で体が反応します。つまり頭で認識しなくても身体が自動的に反応するのです。
私の場合その反応が脳内で「私の体に起こっている」というように統合される前に、腕が動く感覚に気づくという形で「痒み」を認識したわけです。

認識が早くなる例② 音の前の鼓膜の震え
非常に集中力が高まった時でした。遠くの方で大きな音が鳴りました。しかしその音の前に奇妙な経験をしました。その音を認識するほんの一瞬前に耳の奥に何かが触れた感じがしたのです。これは恐らく鼓膜が震える感覚でそのような感覚は皮膚にものが触れる感覚と同じように脳内ではかなり早く認識されます。そして音というのはさまざまな情報処理の必要があるので認識されるのは少し遅いのです。鼓膜の震える感覚は恐らく小さすぎて普通の意識状態では認識できません。なおかつその感覚から音を認識するまでの一瞬を分けて感じることができたのでした。

この他にも光景として認識する前の光の入力を感じたりするようなこともありました。これらは日常の意識状態ではまず経験することはないと思います。
ただ誤解しないでいただきたいのですが、いつもこのような超人的な認識をできるほど集中や注意を研ぎ澄ませなければならないというわけではないのです。
大事なのは注意の訓練を繰り返すことによって、より早く鋭く感覚が起こる瞬間に注意を向けられるようになることです。

長くなってしまったので一旦ここで説明を切ります。
分かりにくい話にお付き合いいただきありがとうございました。


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