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憲法の統治を先にするメリット

2024年1月人気記事4選

憲法は

国民の人権を守るために、国家権力を縛る取り決め

が書いてある、法規範のことです。これは人権編はストレートに規定されてますし、統治編も、国家の枠組みから、間接的に人権を守るように作られていて、いわば、

民主主義の土台

が規定されています。では、なぜ、憲法、それも統治編を先に勉強すると良いかというと、

他の法律が憲法の規定をモデルに作られている

と思われるからです。典型的なのは会社法の機関の部分です。

国の統治機関としては、三権分立という形になっています。日本とかイギリスは議院内閣制なので(日本では行政のトップである内閣の過半数が国会議員なので)、完全な三権分立になっていないのですが、その分、地方自治体が、大統領制に近い構造になっています。

これって、会社法の、株主総会、取締役(会)、監査役(会)によく似ていると思いませんか?

株主総会は国会にあたります。会社のルール(法律に相当)である定款を変更することが出来る、原則(一部例外あり)、唯一の機関です。取締役(会)は会社の手足として、実際の対外的な取引をしたり、日常の業務の取り決めをしたりします。国の機関で言う、行政にあたります。国のオーナーは国民主権ですから、国民ですが、国民総出で会議するのは現実的ではありませんから、代表者を選んで、間接的に国のあり方を決定します。株式会社だと、会社のオーナーである株主の集まりの株主総会で、経営のプロである取締役を選んで、普段は取締役に運営してもらいます。ここもよく似ていますね。

そして、行政の権限が強くなっているので、国民の人権が侵害される場合があります。特に少数派の人達が問題となります。多数派は選挙を通じて、間接的に国を動かすことが出来るからです。そこで、多数派から漏れて、行政に人権を侵害された人は、司法が事後救済する仕組みになっています。

これは会社で言えば、監査役(会)の仕事です。取締役(会)の多数派は、会社という組織の力を背景に強大な権力を握り、濫用することがあります。そのため、一定の独立性を持った、監査役が濫用を取り締まるのです。もっとも、監査役は司法と違って、事後対処だけではありません。

ただし、会社法と国の統治との違いも把握しておくことが大事です。決定的な違いは、

会社は市場原理で動いている

ということです。公平というのは、あくまで、持ち株数に応じて公平ということなので、人権のように、人が人であるという理由だけで認められる権利とは違います。要するに、たくさん、株を持っている人がもっとも強い権力を行使出来るというのは、会社法の強行規定に反しない限り、

公平になるんです。

持ち株数が多いほど、自分の意見が通る取締役を送り込めますし、利益も持ち株数に応じて還元されます。そして何より、

会社は営業利益を上げる事が目的

です。経営と所有が分離されるのは、その専門性のためです。投資はするけど、経営はプロに任せた方が利益は上がるからです。この辺りは国とは少し、異なると思います。国会議員の場合も専門性の高い人を代表者として、活動して欲しいという要請はあると思いますが、別に利益至上主義ではありません。国民の意見を反映して欲しいのですが、代理人というわけでもありません。あくまで、自立的に活動を許された、全ての国民の代表者という立場です。

違法しない前提なら、儲かったらそれでOKの会社法の世界とは似ているようで大きく異なります。

このように、憲法がどちらかというと、抽象的な理念が優先されるのに対して、会社法はかなり、現実的な方向性で規定されています。
この違いは当然、その成立趣旨にあります。

憲法はあくまで、国民の人権を守るために国家権力を縛る法規範

で、

会社法は会社の運営ルール

が規定されているものです。その違いを理解した上でテキストを読んでいくと、理解が早いと思います。

ちなみに、

一般用語と法律用語が同じ文言でも意味が全く異なる

ケースがありますが、会社法が一番、ギャップがあるかもしれません。例えば、社員です。一般用語ではOLとかサラリーマンのことをイメージしますが、会社法では株主のことです。つまり、会社のオーナーです。会社法は独特の用語があるので、慣れるまでは要注意です。

会社設立時の定款の変態設立事項

とか、一瞬、なんのこっちゃ?と、思いますから。


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