天才◯◯◯

昨日NewsPicksの無料お試し期間に登録した。なぜそんな事をしたのかと言うと、自民党の青山繁晴議員とホリエモンの対談を聴きたかったからだ。以降親しみを込め青山議員の事を青山さんと呼ぶ。彼氏は自民党屈指のトリックスターだと僕は認識しているのだが皆さんはいかがだろうか。

トリックスター(英: trickster)とは、神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を展開する者である。往々にしていたずら好きとして描かれる。善と悪、破壊と生産、賢者と愚者など、異なる二面性を持つのが特徴である。

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そもそも青山さんなんて知らないよって人が殆どだろう、最もな話だ。そこで彼のモットーを一つ引用する。

「政治献金を1円も受け取らず、政治資金集めパーティも一切開かず、団体の支持は受けず、後援会を作らず、後援会長を置かず、完全無派閥」という新しい国会議員の生き方を掲げている。

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これだけだとなんの事やら分からないだろう。ただし、議員の中で尖った存在でありたいと願っている人なんだろうなという程度は伝わるのではないか。明確な競争相手が存在する小選挙区においてそれを勝ち抜き衆議院議員を努めようとするのであれば、以上のモットーは自殺行為である。しかし幸いにも青山さんは全国比例の参議院議員だ。票は全国から集めればそれで良くて、つまりSNSの発信が出来て、知名度があれば誰でも構わないのである。地域密着型選挙が必須になってくる衆議院議員や地方の参議院議員にはあり得ないほど「薄く広く」展開していればそれで選挙を戦えてしまうのだ。だから、以上のモットーは本来それほど奇抜でもないのだが、選挙の実態について大して考えた事のない庶民の目には「クリーンでしがらみのない」政治家と映るだけでなく、私利私欲のない道徳的に優れた人といったある種の神々しさを印象として植え付ける事が出来るかもしれない。
ここまで読んだ方は、意地の悪い書き方をするものだと思ったかもしれない。僕は少なくともそう思った。しかしwikipediaの数行から読み解ける確かな推察を述べたに過ぎないと僕は信じる。

以上は、ほんの序章に過ぎない。青山さんの本領はこの程度におけるこれ見よがしの分析ならもろともしない。僕は決してアンチではないが、仮に青山さんを詐欺師呼ばわりする連中が現れたなら、日頃がっちり手懐けている支持者を味方に付けアンチを敵に回して断固戦うだろう。最近のアンチは、自民党内の長老やマスメディアなんだそうだ。長老は、自民党総裁選の推薦人剥がしをやるから敵なのであって、メディアは青山さんを総裁候補に数えていないから同じく敵なのだ。青山さんの上手いところは、敵やアンチを槍玉に挙げたとしても、固有名詞を挙げないところにある。いつも見えない敵と戦っている格好だ。青山さんのYouTubeコメント欄には称賛、同情、アンチ非難等の熱烈なるものが溢れている。心酔の域に入ってきているのではないかと感じるくらいだ。みんな、本当はそうやって正義の為に力一杯働きたいのだ。青山さんはそっと心の隙間を満たしてくれる…。

青山さんの話を聴いていると「安倍さん」という単語がよく出て来る。恐らく安倍さんの一本釣りで参議院議員になったのが青山さんなのだが、したがって安倍さんをヨイショするのが普通かと思いきや、様々な点において反対の立場を唱えるのが青山流だ。最初に「反対です!」と叫び、安倍さんの意見(青山さんの説明によればまずまず真っ当に聴こえるもの)を上回るうっとりする様な理想論を持って来るのだ。これによって感傷的な視聴者は青山さんを最もだと敬い、安倍さんを、青山さんと頻繁に議論していて中々の比較に値する2番手の人物として認識する様になるのだ。視聴者にとっては青山さんがぶっちぎりなので、2番手だって相応な人物として認識されるであろう事は想像に難くない。

でも本当の一番の武器は、「心を言葉に乗せる」点にあると敢えて僕は断言しよう。はっきり言って、政治家の世界に留まらず、日本中見渡しても僕の知る限りぶっちぎりに上手いと言えよう。インフルエンサーは日本中に沢山いるし、YouTube登録者数50数万人といった数はそう飛び抜けていないとも言えるが、ホリエモンに集う200万人とは質が違うのだ。質という言葉には語弊を感じるが、簡単に言うとホリエモンの200万人は腕組みしているのに対し、青山さんの50万人は合掌していると言えようか。頭を使おうという人が200万人、心を信じる人が50万人なのだ。人間皆殆ど同じ面構えをしているのに実は行って帰ってくるほど違うという事だろう。選挙戦の際、青山さんをぐるり囲んで円陣を組んでいた支持者の真剣な眼差しが今でも忘れられない。ああいう人達を何万人と集める事は普通出来ない。何十何百万と貢がせるキャバ嬢も確かに凄いテクを持っているのだろうが、青山さんのあの容姿で老若男女全てを虜に出来るあの話術、話の抑揚、テーマ設定、身振り手振り、真剣さ、包み込むような包容力、それら技術以上に超越した何かそのものに成りきるという事などは、とてもとても真似できたものではないだろう。何時ぞやの選挙中、過去の失点を週刊誌に報道された事があって、「青山さん万事休す!」と思ったものだが驚異的な演技力で有耶無耶にしてしまったのには舌を巻いた。

ここまで読めば少しは分かって頂けたのではないか。ただし考えれば考えるほど、青山さんの真意が逆に分からなくもなってくる。そこまでして演じる理由は何なのか。善い用途にしろ悪い用途にしろ、自分の出来る範囲で頑張るだけでは駄目だったのか。最小の努力で最高のパフォーマンスを求める最近の風潮とはちょっと違うものを感じないでもない。天賦の才によって意外に苦もせずやれてしまうのかもしれないが…。

そんな青山さんが総裁選に立候補するという事で、この度外向きに働きかけてきたのだ。もしくは逆に試験されているのかもしれない。案の定、始めホリエモンはビクついていた。何時もの与し易いゲストでない事をよく分かっている。なにせ相手はトリックスターだからだ。青山さんは、思想的にホリエモンとそう変わらない事をアピールする為抱きつき作戦に終始していた。青山さんのよく用いる手だ。ただ奇抜なだけでは主流派の長にはなれない。ロシアウクライナ戦争におけるメディアの意見を踏襲しながら、ホリエモンに寄せて行く。政治的正論を100%述べてしまってはどうやら首相にはなれないらしい。分かっていた事ではあるが、日本の政治は絶望が深い。対談の後半は、GHQの政策は間違っていたという、右寄り視聴者が喜びそうな、日頃ホリエモンも取り上げている最右翼の話題を青山さんに提示してあげていた。そしてあとは最先端技術の話に落ち着いた。それも悪くはないのだが、総裁選を前にしているからこそ、日本の根本的問題点(例えば軍事、経済)を腹を割って話してみて欲しかった。両者、日頃から足して2で割ったような正論紛いを生業としているのでこれが限界だったのだろう。
しかし、仮に仮に仮に青山さんが総理大臣になったなら自民党の中を掻き回す程度の役割を果たしてくれるだろうと思っている。幾ら政策を中道に寄せるにしたって、今迄色々言ってきた手前、そう無下には後退出来ないものだ。しかしそれより何よりやっぱり、何をしでかすか分からない怖さがホリエモン始めメディアには存在するのだ。反対に何をやるかやる前から分かっているような面子しか、名前がメディアの紙面には挙がってこない。殆ど行き着く先が分かってしまっているという絶望感、トリックスターに飛びつきたくなる気持ち、ご理解頂けるだろうか。

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