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子どもの頃にスポーツをしたら良い、そんなネットで調べたら山ほど出てくるので、それは既存の記事に任せます。

さて、「子どもの頃にこんなスポーツをさせると良い」みたいな記事って良く見かけますよね。幼児期や学童期の子どもの発達と運動・スポーツやスキャモンの発達曲線は、いろんなところで目にします。

これらは、スポーツをしている子どもとスポーツをしていない子どもを比べて、その結果子どもの頃にスポーツをした方が良いと述べているわけです。更には、スポーツをすると認知力が向上するだの、IQが上がるだの、色々出てきます。

では、スポーツは何か身体的な発達を促進したり、IQや認知力を向上したり、自信をつけたりするために行うものなのでしょうか?

答えはNoです。スポーツは、「やりたい」からやるんです。健康のため、楽しむため、人とお喋りするため、モテるため、色々な目的で「やりたい」からやるんです。

特に子どもの頃に特化するなら、面白いから、楽しいから、スポーツをやります。その結果、認知力など副次的に向上するのかもしれません。これが、子どもの頃のスポーツの大前提です。

でも、僕自身が疑問に思っていることは、スポーツをしている子どもとしていない子どもの差ばかりが大きく取り上げられるのか、という点です。

間違いなく、子どもは大人になるために成長します。そして、子どもの時期は20年なのに対して、大人の時期はその後60年以上続きます。人生のスパンから考えたら、大人の時期の方が長いんです。つまり、大人になったとき、運動・スポーツと適切な関係を築ける方が重要なんです。健康的な生活を送るためには、食事と休養、そして運動が必要です。

子どもの頃に、大人になったときに健康的な生活を送るための素地を培うこと、それは保護者や家族、地域社会の責務だと考えています。そのためには、大人になってからのスポーツ、つまり生涯スポーツと、子どもの頃のスポーツを繋げないといけません。すなわち、「子どもの頃のどんな運動経験が、生涯スポーツの実施に影響するのか」を知らなければいけないということです。そこで、1本の論文を紹介します。

鈴木(2009)は、運動・文化サークルに所属する44歳~79歳までの男女80名に、成人期以前(過去)の運動経験と現在の運動習慣等に関する質問紙調査を実施しました。その結果を簡単に述べると以下となります。

1.「過去に経験したスポーツ種目の数」と「過去の運動好意度」、「過去の主観的運動量(どれだけしっかり運動したか)」に共通する因子として、【過去の運動経験】を設定した。

2.「現在の運動実施頻度」と「現在の運動実施時間」に共通する因子として、【現在の運動習慣】を設定した。

3.【過去の運動経験】と【現在の運動習慣】の間に関係はなかった。

4.【過去の運動経験】が「現在の運動好意度」に影響し、「現在の運動好意度」が【現在の運動習慣】に影響していた。

つまり、ただ子どもの頃に運動・スポーツを習わせればよいってものではないんですよね。なぜなら、子どもの頃の経験が大人になってからのスポーツ実施には直接影響しから、です。スポーツをやったところで、バーンアウトしたりトラウマになってしまえば、スポーツなんて2度とやりたくないですよね。

また、大人になったときの運動好意度や運動習慣は、直接コントロールすることはできません。子どもの頃にコントロールできることは、上の項目でいう【過去の運動経験】すなわち子どもの頃の運動経験を良いものにするということのみなんです。

そして、【過去の運動経験】は「過去に経験したスポーツ種目の数」と「過去の運動好意度」、「過去の主観的運動量」の因子でした。つまり、子どもの頃に色々なスポーツ種目ができ、かつ運動が好きでしっかり動けることが大切だということになります。ということで、子どもの頃に生涯スポーツ実践の素地を培うためのスポーツクラブは、

1.運動すること自体を楽しむこと

2.特定の種目ではなく、複数種目を実施すること

を満たしていることが条件であると言えます。そして、ここから、僕自身の思いとしては、

「そこそこスポーツを知っていて、ほどほどに動け、思いっきり楽しめる子ども」

を育てることの重要性を感じています。

うちの市には、上の条件を満たすスポーツクラブ、ないですね。そんな状況に、僕は非常に危機感を持っています。少なくとも、目の前にいる子どもたちが、大人になったときに健康でいること、スポーツに参加していること、スポーツコミュニティに参加して充実した余暇を過ごしていることは、最高にうれしいです。僕は一流のプロスポーツ選手よりも、一流の生涯スポーツプレーヤーを育てたいんです。なので、そんな素地を培うスポーツクラブ作ります。

それでは

どいちゃん

鈴木宏哉. (2009). どんな運動経験が生涯を通じた運動習慣獲得に必要か?: 成人期以前の運動経験が成人後の運動習慣に及ぼす影響. 発育発達研究, 2009(41), 41_1-41_9.

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