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昔話と今のこと


小石川に住んでいた時だから20年くらい前だと思う。読み込むのがのろのろのインターネット、すぐにフリーズするMacでレースのことを検索していた時、昔の新聞記事を写したページを見つけた。おぼろげな記憶を掘り起こすと、その記事には、19世紀のアイルランドで、両親をなくしたあとクロッシェレースでなんとか生計をたてている10代の少女の1日の様子が綴られていた。

こまかい記述もなんとなく覚えているのだけど、ここに書くには記憶が曖昧。でも、朝早い小屋の中の風景、そこで1人寝起きしてレース編みを編む女の子の姿がふっと浮かんできて、もっと近づいてみたいような気がしたのを覚えている。遠い国の別の時代に生きた女の子に実際に会うことはできないけれど、そのかわり、家にいながらその子の生きた時代の新聞記事を読むという、擬似的な同時代体験をなんだか不思議に思った。

ブックマークしていたはずのMacも、その後何度かの代替わりを経てリンクは失われ、もう一度読みたいと時々検索してみているのだけれど見つからない。


20年前からすれば、美術館・博物館の所蔵品から昔の手芸書、新聞、雑誌に個人の手稿まで、さまざまなものを綺麗に撮影された精密な画像で見られるようになった今は、夢のように感じる。(さらに遡って、高校時代、「これが電子計算機というものだ」と次の間付きの一部屋の真ん中にドンと据えられた大きな機械を見せられて、これで何ができるのだろうと思った日からは、そのまた先の夢)


というわけで、デジタルアーカイブで古い資料を探すのが楽しくて仕方ない。手芸全般に興味があるけれど、6〜7歳の頃、手芸として初めて触れたかぎ針編みに最近は興味の中心が戻っていて、ネット散歩をして何かを見つけては喜んでいる。

以前ツイッターでこんなことを呟いたのだけど、古いレースを眺めたり、手の跡をたどって編んでみたりすることに加えて、古い資料を読んでみるということは、その「手の中を覗き込んでいる感じ」に少しだけ近づくことではないかと思っている。ひとつひとつは小さな点にすぎず、老眼で少しずつしか読み進められないけど、点を集めていくと、なにかもっと見えてこないだろうか?と思いながらネットを散歩している。


noteは、かぎ針編みに限らず、デジタルアーカイブで見つけた手芸関係の古い資料のリンクなど中心に集める場所にしようと思っています。ツイッターでも時々つぶやいているけれど、ツイッターは自分でも見つけにくくなるし、ここに集めておけば、もしかしたら、いつか誰かの役に立つかもしれないという小さな野望もこめて。

(上記のツイートにもつけたトップの写真は20世紀初めの頃、フランス、ブルターニュ地方のもの)

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