見出し画像

◎手帖P14「RENEW:未来に繋がる工房見学」

2020/8/26,9/2OA

福井県鯖江市と聞いたら、何を想像しますか?土井コマキ的にはもちろんメガネ。それから?他には?今回はこの数年憧れて続けている、工房見学イベント「RENEW(リニュー)」のお話です。

RENEW代表の新山さんは、周りにメガネ工場もたくさんあるような地区にデザイン事務所を構えてらっしゃいます。鯖江市・越前市・越前町は半径10km圏内に、漆器・メガネ・和紙・刃物・たんす・繊維・焼物と、7つの産業が一つの地区にある、まるで町全体が工房のような場所なんですって。知りませんでした!そう・・・あまり知られていないんです。新山さんも、大阪から引越しをして初めて知って、びっくりしたそうです。
メガネは、町の人たちの努力で知ってもらえるようになったけれど、例えば漆器や和紙は日本で一番大きい規模でやっているのに知られていないのがもったいない。高い技術のある職人さんたちも、なんだか自信なさげ・・・。すごいことをしているんだから、それをたくさんの人に知ってもらえたら、このまちの産業のファンになってもらえるだろうし、職人さんたちにも自信を持ってもらえるのでは。

そこで2015年にスタートしたのが、このRENEWというプロジェクト。最初は新山さんの事務所のある人口4000人の集落だけで始めた、普段は入れない工房を見学できるイベントです。

こんなに産業が盛んなのに、なぜ知られていないのかというと、下請けのみで、お客さんが直接来ることがなかったから。しかも、自分たちすごいんだぞって言えない慎ましやかな人が多いそうです。というのも、美術工芸ではなく日常工芸や生活産業なので、日常で使うものを作ってきたので、時代に合わせて作るものが変化してきたんですね。そのアップデートを、職人さんたちは「自分たちには核がないから・・・」と思ってしまっているんですって!変化できるってカッコいいのに、そんなふうに思ってしまうなんて・・・!そんな職人さんたちを、そうじゃないよ!って応援するプロジェクトなんです。

また、後継がいなくて自分たちの代で畳んでしまおうかという工房も多いそうなんです。でも、やりたいという人もたくさんいるので、そういう人と工房を繋ぎたい。そのために、まずは、誇りを取り戻してもらいたい。そして、ものづくりの技術も更新、後継していかなくては。「RENEW」は、再び始まる、更新するという思いがこもった名前です。リニューアルしたいのは、商品や技術というよりも、まずは気持ちをリニューアルということだったんですね。

そんな「RENEW」は今年が6回目。2015年から開催され、まちにも変化が出てきました。
観光地ではなかったこの地区ですが、20近くの工房が改修してショップを作るなど、今までは東京などに持っていって買ってもらっていたのが、自分たちのところにお客さんに来て買ってもらうという動きが出てきました。職人さんからお客さんに直接説明して商品を購入してもらうので、職人さんたちのモチベーションアップにもつながっていたり、買って使う人と交流することで新商品のアイデアも生まれたり。
職人さんから直接購入ができるということは、お客さんにとっても商品以上のものを獲得できる機会に。百貨店に置いてあるよりも、情報量が多いので、知れることが多いです。工芸品ってとても良いものなんだろうなと思っていても、どういいのか、なかなか分かりませんよね。なので、工房見学もただ見るだけじゃなくて、作り手の思い、背景工程などもちゃんと知ることができる見学、単純な見学ではなく、体験を購入するような見学にしようと工夫しているそうです。そして、成功例が出てくると、変化は連鎖して街全体がいきいきとしてきました。

新山さんも自分のデザイン事務所をリニューアルして、観光案内所を自分たちで作ったり、レンタサイクルを始めたり、旅行業の免許取得の勉強をしたりと、デザイン事務所なのに、その範疇を超えて町づくりをしようと動いているそうです。今は年に1回のRENEWですが、数年後には「福井に行って工房見学をする」が1年を通して楽しめる定番の観光になるように、お客さんにこの町の物づくりをきちんと巡ってもらうための、体制づくりをしているところだそうです。

そもそもRENEWは、持続可能な産地を作りたいというのがテーマのプロジェクト。そのために必要なのが、作り手自身が自分で考え自分で行動する創造性が必要。そしてそれを産地全体に広げていくこと。その姿を消費者の方に知ってもらい、より愛着を持ってもらって、長く使える人と人、人と物の関係性を作っていくこと。消費者と産地がつながっている街になっていきたい。それが目標です。

ただ、やっぱり今のままでは、まだまだ工芸を続けるのは難しい状況です。特にこのコロナで、さらに大変な打撃を受けているそうです。今年どうして開催に踏み切ったかというと、自分たちの街はまだまだやるんだぞ、というファイティングポーズをもう一度みんなで取るため。職人さんたちの気持ちをもう一度奮い立たせるため!やっぱり、職人さんたちのプライドを取り戻す、その応援隊がRENEWなんですね。


SDGsで考えてみると、職人さんたちの気持ちへ寄り添う「8働きがいも経済成長も」に当てはまりますよね。ものづくりですから「9産業と技術革新の基盤をつくろう」、ものづくりにおいて一番大事な「12つくる責任つかう責任」は当然関係します。また、工芸品は修理をして長く使えるものなので、そのことも「つくる責任」として広く紹介していきたいとのことでした。金継ぎやってみたいなぁ!
鯖江市は移住者が多いそうで、実は、新山さんのデザイン事務所のスタッフも、ほぼ他県からの移住組。移住してきた人も、ずっと住んでいる人も、気持ちよく楽しく暮らしていける街づくり「11住み続けられるまちづくりを」しなくてはいけないなと、思っているそうです。RENEWがきっかけの移住者も生まれているんですって。良い変化が連鎖する、理想的なプロジェクトですよね。

「RENEW」は今年も開催します!
初のリアル&オンライン工房見学
『Re:RENEW 2020』
2020年10月9日(金)〜11日(日)

現地での工房見学はもちろん、オンラインでも見学やワークショップ・商品販売など楽しめるコンテンツがたくさんあります。
オンラインでの工房見学が、プレイベントとして、すでにいくつか配信されています。インスタライブで開催された、越前たんすのオンライン工房に参加してみたんですが、いろんな種類の木材を叩いて音の違いを聞かせてもらったり、その違いは木材の質の違いで、それぞれどんなものを作るのに向いているのか、、、というような話も分かりやすくて、面白かったです。しかもリアルな臨場感があって、なんだか木材の香りもしてくるような気がしました。いつか実際に行って手で触れてみたいな〜って思いました。

ぜひチェックしてみてくださいね〜〜!
おなじ産業でも違う工房だとそれぞれに得意分野が違って、作り方も違うとのことで、その違いを見るのも面白そうです。今年、現地では76の工房を3日間オープン。30以上のワークショップが開催されます。自分だけのメガネを作るワークショップもあるらしいですよ。気になる〜。

今年は、なかなか移動がかなわない人も多いと思いますが、逆にオンラインで参加しやすいです。今年はまずは覗き見をして、今後、実際に足を運ぶ入り口にしたいですね!

▼RENEW
https://renew-fukui.com



全て無料記事ですが、サポートして下さったらとても嬉しいです。当たり前ですが、自分のお財布で活動しています。サポートしていただいたお金は、podcast用に購入した機材費、podcastのインタビュアーさんへのお茶代、コマキ手帖の取材費に使わせてもらいます。よろしくお願いします。