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ビジネスにおける「市場の解像度」とはなんだろう

「市場の解像度を上げる」

ビジネスシーンでは「どの市場を狙うか」「市場の解像度を上げよう」という話がよく出ると思いますし、事業をやる上では重要な要素です。

最近周りでこういった話題が増えたので、自分でもどういうことなのかを改めて考えてみようと思います。

私の場合、考え方のステップは主に3つです。

1.市場の定義決め(抽象化)
2.市場の細分化(具体化)
3.戦略の検討

市場とは何か

まず、市場とは何か。

「市場」と調べるとgoo辞書では「財貨・サービスが売買される場についての抽象的な概念。 商品の販路。マーケット」とあります。

私はもう少しかみ砕いて「サービスや製品、プロダクトを利用する可能性がある特定のセグメント」みたいなイメージで捉えています。

「このサービスを使ってくれる人達はこういう人達」という枠組みみたいな感じです。
どの池・川・海でどの魚を釣るのか、を決めないと魚釣りは難しいですよね。

そして、市場規模は「利用可能性のある特定セグメントにおいて、どのくらいの経済規模があるのか」という捉え方です。

市場を定義するには抽象化が必要

事業を推進する場合、「どの市場を狙うのか」「どの市場でどの程度のシェアを取るか」などを考えることがあると思います。

では、事業を推進するうえでどの市場を狙うか、と考える際にどうやって市場を定義すればいいのか。

狙う事業規模によって考え方は変わると思いますが、100億の事業を作りたければ当然ながら市場規模が100億以上の市場を狙う必要があります。

そうなると、例えばお茶を売りたいと考えた時に「ハトムギ茶などの健康茶を毎日飲む人」というすごく絞られた市場では100億円には届かないかもしれません。

なので、私は「抽象化」することで市場を探すケースが多いです。

例えばお茶の例で言えば、「ハトムギ茶など健康茶を飲む人」は「毎日お茶を飲む人」と言えますし、他の飲み物からお茶に乗り換えるかも、と考えれば「飲料を飲む人」が対象になるかもしれません。

健康茶だと2018年で136億くらいしか市場規模がありません。ここから100億を目指そうとおもうと、市場全体のシェア7割以上を取らなければいけません。これは厳しい。

でも、お茶を飲む人ならたくさんいます。実際、茶系飲料市場は2019年で5,200億くらいの市場規模がある。
更に、飲料市場まで広げれば2019年で5兆円以上の市場となる。

すると、お茶を売っていく場合、抽象化して市場を考えると3段階の市場があり、その中でどう戦っていくかをより広い感覚で考えることができます。

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私の場合は、このように「売りたいものはどういう行為・ジャンルに含まれるものなのか」を抽象化していき、自分たちが目指したい方向を検討するようにしています。

新規事業の場合は、やりたいこととターゲット市場を一緒に考えます。

市場の攻め方を考えるための具体化・細分化

抽象化して自分たちが狙いたいセグメントがどういうところなのか、どのくらい規模があるのかが見えたら、今度はどうやって攻めるかを考えるために、抽象化した市場を細分化していきます。

例えば、健康茶市場といっても「ハトムギ茶」「そば茶」「黒豆茶」「コーン茶」など、様々な健康茶があります。

茶系飲料で言えば「緑茶」「ウーロン茶」「紅茶」など茶の種類もあれば、「ティーバッグ」「茶葉」「粉末」など提供方法でも分類ができます。

このように、その市場を構成する要素を並べて市場の中がどういう作りになっているかを具体的に見ていきます。

例)「世界の茶の現状について」日本茶葉中央会

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すると、定めた市場の中がどんな構造となっていて、それぞれの要素がどういう状態なのか見えてきます。

この構造を理解することが、この後の戦略を作る上ではとても重要になると私は考えています。

市場を見ながら戦略を考える

具体化によって市場の構造を理解できたら、その市場をどう攻めるべきかが見えてきます。

例えばお茶を売る場合、普通に健康茶を売っても100億円事業にするのはちょっと厳しそうなのはわかりました。
そこで1世帯当たりの消費金額をみると、緑茶が高そうなのがわかります。

更に、茶系飲料の分類をみると「緑茶」「ウーロン茶」「紅茶」など、茶の種類も複数あることがわかったとします。

では、どう攻めるか。
例えば、スタート段階では緑茶に特化した健康茶を茶葉で作り、その後ウーロン茶、紅茶、、、という感じで茶葉の種類を横展開していくのはどうでしょう。

そして、横展開する際に合わせてペットボトル販売やティーバッグ販売も同時に実施できれば、市場の中の複数マスを抑えていくことができそうじゃないですか?

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どう攻めるかがわかれば、あとはその為に何をするのかを考え実行するだけ。茶系飲料市場5,200億円の2%を取れれば100億円の事業にすることができます。

他にも、健康茶だけでなく他の飲料(例えばエナジードリンクなど)も展開していくのもひとつの手かもしれません。

この、「どうやって100億円の事業をつくるのか」を具体的に説明できることこそ、「市場の解像度が高い状態」だと私は思います。

例えば①「クラウド会計ソフトのfreee」

私の所属するfreeeという会社は、クラウド型の会計ソフトを提供しています。

freeeの市場定義はシンプルで、会計ソフト市場約6,500億+人事労務市場約5,500億=1.2兆円をターゲットと見ています。

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そして、今後のクラウド会計ソフトの市場開拓の余地が大きいことから、自社の成長余地を示しています。

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さらに、freeeはスモールビジネスの企業活動を分解し、バックオフィス領域とフロント/ミドル領域と定義。それぞれの業務における必要要素をつなぎ合わせる統合型クラウドERPソリューションを展開する戦略を検討しています。

現状未展開領域まで広げることができれば、先に出ていた1.2兆円を超える市場を視野に入れることができます。

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例えば②「ロボアドバイザーのWealthNavi」

個人の資産運用を簡易おこなえるようにするロボアドバイザーを提供するWealthNavi。

WealthNaviの市場定義は「20~50代の準富裕層の運用可能な金融資産規模」とされています。

これはWealthNaviの推定だと15~18兆円の巨大マーケットであり、そのうち2%のシェア獲得を目指して運営を進めてきたとのこと。
そして実際に、3,000億円の預かり資産を達成した模様です。

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WealthNaviは日本の預貯金比率が高いことに目をつけ、将来的な資産形成を助ける形でプロダクトを展開。
一見競合になりがちな銀行や証券のターゲットである60代以上の富裕層を避け、50代以下の働く世代に対象を絞って集客をかけています。

将来的には、個人向けの金融プラットフォームとなり、様々な側面から個人の金融課題を解決する絵を描いています。

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そのネクストステップとして、「老後2,000万円問題」を解決すべく、NISA口座でお任せ運用をおこなうサービスを展開し始めています。

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市場定義、ターゲット、そしてそのターゲットの将来へ向けた課題の解決など、戦略としては非常にわかりやすいですね。

例えば③「印刷・集客支援のラクスル」

もはや印刷領域のみならず、広告業界や物流業界にも進出しているラクスル。伝統産業の産業改革を進める彼らは、どのような市場の捉え方をしているんでしょうか。

ラクスルの市場定義は、紙の印刷から始まり、集客支援、オフィス/産業資材の印刷など印刷に関わる領域をターゲットにしています。

紙への印刷は市場規模で3兆円、集客支援支援が1~2兆円、オフィス/産業資材の印刷などの小ロット印刷が3~5兆円という規模を見据えているようです。

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そして、印刷事業で獲得した顧客基盤・シェアリング基盤をもとに、顧客のバリューチェーンにおける課題の中でも、伝統産業である広告領域と物流領域を現在開拓中。

取引コスト、業務コストの両面を効率化することで顧客の課題解決を図っていますね。

印刷市場以上に大きな市場を見据えることで、今後の企業としての成長を狙っているようです。

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そして、彼らが21世紀型と呼んでいる水平分業されたプラットフォームの創造を目指す戦略とのこと。
かなり大きな改革を狙っていますね。

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市場とは「サービスや製品、プロダクトを利用する可能性がある特定のセグメント」であり、市場規模は「利用可能性のある特定セグメントにおいて、どのくらいの経済規模があるのか」とお伝えしました。

事例でもあったように、市場を定義し、その市場をどう攻めるのかがわかると、企業としての未来が見えてきます。

この自社の成長を具体的に語れる状態が「解像度が高い状態」であり、自社のロードマップだと思います。

事業の将来像に悩む方に、少しでも参考になれば幸いです。


※参考資料
・freee:「2021年6月期 第2四半期決算説明資料」・WealthNavi:「2020年12月期 通期決算説明資料」・ラクスル:「2021年7月期第1四半期決算説明会資料」

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